2013年6月27日木曜日

フランスのアロマテラピーの現状について

越中富山の反魂丹(はんごんたん)
鼻糞丸めて万金丹(まんきんたん)
それを呑む奴ァアンポンタン
 
むかし、富山は薬を製造する産業が盛んだった(まあ、いまもそうだろうが)。その薬は主として大坂に流れ、大坂には薬問屋がたくさんできた。薬品会社が関西に多いのは、そうした歴史があるからだ。富山大学の薬学部が有名なのも、それに関連がある。
 
上掲の俗謡も、そうした背景から生まれた。
 
むかしは、いまのように薬品を、その原料などを国家で定められた基準に従って薬屋が作るなどということは決してなかった。
 
農民や山林の民などは、そんな薬もほとんど買えなかったから、身近な薬草(ドクダミ、ゲンノショウコ、オトギリソウなど)をさまざまに工夫して薬用した。
 
私もこどものころ、栄養不足が原因の免疫不全からか、やたらに体に膿をもつ腫れ物ができた。
 
母は、そんな私の体中の患部にドクダミを焼いてベトベトにしたものを貼りつけた。すると、膿が排出されて、できものがなおるのだった。
 
『アロマテラピー図解事典』( 岩城都子[松田さと子]著、高橋書店刊)という本を書店で立ち読みしたところ、「アロマテラピー先進国であるフランスでは、ドクターが医療現場で精油の効果効能を利用、クライアント(ペイシェントというべきではないか-高山)の治療に使われています」とか、「医療の現場で利用されている」とかと書かれている。
 
アロマテラピーの発祥の地であるフランスでは、医師による『メディカルアロマテラピー』が確立。精油は薬局で処方され、内服も認められている。予防医学のカギを握るものとして普及している」とかといった、私には信じられないようなことが述べられている。
 
これは、考えにくいことだと私は早速これを刊行した書店にたずねた。
 
書店では、英国在住の著者に問い合せてくれた。仏人医師のひとりのその著者への答えとしてこの本の著者は私に以下のように知らせてきた。
To make things simple and clear, I prefer to let you know that medical aromatherapy is mainly practiced by doctors.(MDs) in private practices than in hospitals.
 
In some hospitals, the way essential oils are used is more as a side therapy for the patient's comfort or well being, but not really for the medical treatment itself.
 
In private practices, it is very different, and hundreds of private MDs use essential oils for medical situations, mainly infection (infectious ではないかな?-高山)diseases, with great success.
つまり、病院よりも市井の開業医などが私的にアロマテラピーを行っていること、病院でもいくつか、このテラピーを行っているといころはあるものの、主たる治療ではなく、あくまで患者の気分をよくするサイド療法として行っていること、そして、病院ではなく、プライベートにアロマテラピーを実践している数百名の医師たちは、精油類を感染症に使用して、大きな成功を収めている、というわけである。
 
すると、いくつも疑問が生じる。
 
まず、第一に、フランスの薬局方では、精油の使用を認めているのかということ。
 
民間医療は、各人が自分の責任で家族に施してもよいだろう(しかし、公的な病院を受診しなければならぬ疾病まで家族だからという理由で自己流の療法を施し、その結果重大な結果を生じさせたら、刑事責任が問われるはずである)。
 
つぎに、薬局方で精油の使用が認可されているなら、その精油はどんな基準を満たしているのかということ。(そんな医薬品グレードの精油が本当に存在するのか? どんなメーカーがどんな基準に従って作ったものか? AFNOR規格などの基準を満たしたといっても、それが医療品グレードということとは、全く別のことだ。この規格はいくつかのマーカー成分の存在と分量を確認するだけのものに過ぎない)。
 
精油のように、年々歳々その構成成分が変化するような不安定なものを、誰が、どんな根拠で、「薬剤」としてフランス全土の病院・医院で利用するのを許しているのか。
 
そんなことで、医師は責任ある治療ができるのか。日本だったら絶対に考えられないことだ。そこをぜひ問いたい。そもそも、そんな完璧な医薬品グレードの精油が作れる会社がもしあったら、世界中のアロマテラピー関係者は、それしか用いなくなるだろう。
 
だいたい、ジェネリック医薬品すら、それでは責任をもって治療にあたれないという医師も日本にはたくさんいる。フランスでは、そんな初歩的なことも医師は考えないのか。
 
中医学(中国伝統医学。しかし、漢方医学は中国伝統医学から枝分かれした別物となっている)やアロマテラピーなどは、いまの公的に是認されている現代医学とは根本的に異なった医療哲学のうえに成り立っている。その方針で治療にあたるというなら、筋が通っている。
 
だが、何でもかんでも効けばいいのだろうという考え方は危険だ。
漢方製剤(元来は中国伝統医学の処方)を販売している某大手会社のように、漢方製剤を用いるなら、本来は中国伝統医学理論に基づいて患者にそれを投与しなければならない。
 
それなのに、その製薬会社は、中国伝統医学から生まれた漢方製剤の使用にあたり医師たちにその理論を一切説かなかった(いまはどうなっているのか知らないが)。そのために、多くの死者を出す事態を招いた。患者の中には小柴胡湯エキスにより間質性肺炎という病気で死亡するものが続出したのである。この事件とは関係ないが、あの美空ひばりもこの間質性肺炎で亡くなっている。
 
三流週刊誌(私は週刊誌はすべて三流と考えている)は、「漢方薬に副作用がないという神話が崩れた!」と、騒いだ。
 
バカ記者の無知はいまさら救いようがない。それはどうでもよいが、フランスで、そんなに無原則的にアロマテラピーを現代医学に併用しているとすれば、フランスは現代医学を実践している国々のなかで、もっとも遅れていると言わざるを得ない。
 
英国の医師で「自分はアロマテラピーを行っている」などという人間は皆無だ。英国の医師は賢明だからだ。
 
フランスの薬局方で精油が認められているというなら、何の精油と何の精油か、そこを聞かせてもらおう(まさか精油ならなんでもOK、そんなことはなかろう)。そして患者にその内服もさせるというなら、そのアロマテラピーで万一事故が発生した場合、その医師はどんな処分を受けるのか、逮捕され実刑を宣告されるのか? 医師免許を剥奪されるのか? そこまではっきり調べてからものを書くべきだろう。
 
アロマテラピーを、ただのファッショナブルなおしゃれとして、香水利用の延長線上で考えているような人間は、くだらぬ本など出すべきでない。多くの人を誤解させるもととなる犯罪的な行為だと私は断じる。反論があるならうけたまわろう。

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