2014年2月1日土曜日

ホワイトカンファー、ブラウンカンファー、イエローカンファー、ブルーカンファー(樟脳)|精油類を買うときには注意して!⑤

カンファー(Cinnamomum camphora)油

いまでこそ「カンファー(クスノキ)」という、あまり利用されなくなったこのクスノキ科の木の精油だが、江戸時代は、これが陶磁器や漆器(しっき)などとともに、オランダ語で「ヤーパン・カンフル(日本樟脳)」と称されて、対オランダ貿易品の花形の一つであった。これは薬品とされ、とくに心臓を強壮にする働きで有名。心臓病などで倒れた人を起死回生させる薬として、急いで「カンフル」注射を打ったなんていう表現はお聞きになったことがあるでしょう。
 
オランダに輸出されたといっても、この精油そのものを船積みしたわけではない。輸出されたのはC10H16Oという式で表わされるこの精油を冷却すると析出してくる無色透明の光沢のある結晶体すなわち樟脳で、ツーンとする特異な芳香を発する。
 
これは水には不溶、アルコール、エーテルなどに溶ける。
無煙火薬、後世のセルロイド(ニトロセルロースとカンファーとをアルコールを加えて加熱成型したプラスチックの一種)の原料になり、防虫剤、防臭剤、医薬としてもひろく活用された。
 
むかしは今日のように石油由来のプラスチック製品などなかったので、鉛筆箱、定規などの文房具によくセルロイドが用いられた。幼い私はこわれたセルロイドの玩具などを削って、アルミ製の鉛筆キャップにつめ、末端を潰し、それをストーブの上などに置いたり、ロウソクの炎で加熱したりした。すると、そのキャップは後部から白い煙を勢いよく出して、空中を飛翔(ひしょう)したものだった。糸川博士らの「ペンシルロケット(1955年)」より7〜8年も前の話ですよ。
 
失礼、うっかり私自身のむかしの話になってしまった。
カンファー(クスノキ)の原産地は中国。いまでは中国のほか、日本、台湾などにもこの木が(日本では関東以南)生えていて、カンファー油の生産も規模も小さくなったが、今も続けられている。
 
原油は結晶カンファーを含んでいる。これをフィルタープレッシングというプロセスで除去する。ついで、これをヴァキュームレクティファイイング(真空精留)すると、最高品質の①ホワイトカンファー油に加えて、以下②、③、④の各留分が得られる。
 
①ホワイトカンファー油
 無色から淡黄色。分留工程で沸点は低く、比重は小(つまり軽い)。
 フレッシュでシャープなしみとおるような香り。アロマテラピーではもっぱらこれが使用される。これには、有毒なサフロールは含まれていない。
②ブラウンカンファー油
 これは少なくとも80%のサフロールを含む。サフロールはきわめて毒性が強い成分だ。発ガン性、神経毒性を有する。ウサギにおいて、サフロールの最小致死量は10g/kg(経口)。マウスに胃管注入したケースでは肝臓に発ガンがみられた。米国では1961年に、サフロールを食品に添加することを禁じている。
これはサッサフラス油と同様の特徴的な香りが特色である。
③イエローカンファー油
 これは前記のブラウンカンファー油からサフロール分を抜いたものだが、サッサフラス臭が強い。これも場合によりアロマテラピーで用いられることがあるが、あまり感心できない。およしなさい。
④ブルーカンファー油
 これは、比重のもっとも大きな精油で、各種セスキテルペンを含む。これもアロマテラピーではめったに用いない。
 
 
 ・主要成分(%で示す) <これはホワイトカンファーの場合>
  1,8-シネオール     30.2%
  α-ピネン        6.8%
  カンファー       50.8%
  テルピネオール     2.1%
  セスキテルペン類    各種(原料植物の産地により変動がある)
 
 ・この精油の偽和の問題
  この精油は価格も安いため、あまり偽和されることはないと考えてよい。ただ、この精油の成分は、100%天然とはいっても、原木の産地によって大きな差があることに留意していただきたい。
 
 ・毒性
  LD50値(半数致死量)
   ホワイトカンファー ラットにおいて、>5ml/kg(経口)、ウサギにおいて、>5ml/kg(経皮)
   イエローカンファー ラットにおいて、4g/kg(経口)、ウサギにおいて、>5g/kg(経皮) 
   ブラウンカンファー ラットにおいて、2.5ml/kg(経口)、ウサギにおいて、>4ml/kg(経皮) 
 
  刺激性/感作性は、ホワイトの場合、ヒトでは濃度20%、イエローでは濃度4%で、ブラウンだと濃度4%でそれぞれ認められない。
  光毒性は、いっさいない。

 

 ・効果
  ー 鎮痙作用(強力) 小腸の蠕動運動の活性化作用。モルモットの回腸におけるin vivoでの観察結果より。また、イヌの小腸でもその蠕動運動を強力にし、その律動性を向上させた。
  ー 抗菌作用 ホワイトカンファーはさまざまな種類の細菌にたいして強力な殺菌力を示す。
  ー 抗真菌作用 ホワイトは、多くの真菌に有効。
  ー その他の作用 キャリヤーで稀釈して、鼻腔に塗布して鼻づまりに用いたり、筋肉組織にすりこんで血流をよくして老廃物の除去を促したりすることはひろく行われている。
 
30年ほど前に、ジャン・バルネ博士の著書を読んだとき、博士が日本樟脳油の毒性・危険性を強く訴えていたことを思いだす。
博士の見解には異議もあるが、たしかに小児や妊婦などは、ホワイトカンファーといっても、これを多用しないほうがよさそうである。

この記事は参考になりましたか?

少しでも参考になればSNSでシェアしてもらうと嬉しいです。
   ↓ ↓ ↓

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿