2014年7月22日火曜日

パチュリ Pogostemon cablin | 精油類を買うときには注意して!(22)

パチュリ油
 
 学名 Pogostemon cablin Benth, 別名P. patchouli Hook
    厳密には、これらは少し異なった種類。しかし、用途は同じで、産地でも混同されることが多い。ほかにも近似種は30種近くある。「パチョリ」とも呼ぶ。
 
 特徴 東南アジア、マレーシアやインドなどを原産地とし、これらの地域で栽培されるシソ科の双子葉の多年草(亜低木化することもある)。高さは30〜80cm。多くは、葉を4〜5日干して独特の芳香を持つ精油を蒸留する。正確に言うと、シソ科ヒゲオシベ属に分類されるシソ科のハーブで、ヨーロッパの各種のシソ科ハーブ類とは大きな違いがある植物。
  なお、パチュリ油を保管する場合には、光のあたらない、15℃を超えない恒温の場所で保存するのがよいと言われる。
 
主要成分(%で示す)
 パチュリアルコール    31〜46
 α-グアイエン       10〜15
 カリオフィレン      2〜4
 α-ブルネセン       13〜17
 セーシェレン       6〜9.4
 α-パチュリン       3.9〜5.9
 β-パチュリン       1.7〜4.8
 ポゴストール       0〜2.7
 
 含有成分の鉄分を人為的に除去することもある。こうすると、香りに「軽み」が出るためである。上にはあげなかったが、微小成分類、痕跡量成分の(+)-ノルパチュレノール(0.5%以下の含有量)、ノルテトラパチュロール(含有量0.001%)などが、バチュリ油独特の芳香に大きく貢献する。
 
・偽和の問題
 シダーウッド油、クローブ油から抽出したセスキテルペン類、またシダーウッド油の誘導体類、さらにメチルアビエテート、ヒドロアビエテートアルコール類、ベチバー油を抽出したあとの残留物(つまりカスだ)、カンファー油抽出時の残留物、ガージャンバルサム油(これはα-グルユネンの存在でそれと検出できる)、コパイババルサム油、ヒマシ油、イソボルニルアセテートなどをめちゃくちゃに加えて、カットにカットを重ねた(すなわち増量された)パチュリ油が、市場をほとんど占拠している。あなたのお手持ちのパチュリ油も99.9%の確率でこの手の製品である。
 
・毒性
 LD50値
  ラットで>5g/kg(経口)
  ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて20%濃度でいずれもゼロ。
  ただし皮膚病患者の場合は、0.1%以下の濃度で用いるべきであると、マリア・リズ=バルチン博士は言っている。
 
 光毒性
  報告例なし。
 
・作用(もちろんホンモノでなければ、いわゆる「効果」など論じるのはナンセンスである)
 薬理作用 モルモットの回腸に、in vitroで、強い鎮痙効果を示した。
 抗菌効果 試験に用いるパチュリ油の種類によって、変動がある。一定の抗菌効果は期待できるとだけ言っておこう。蒸散させる方法でも、同様のことがいえる。
 
 抗真菌効果 きわめて弱い抗真菌力しかない。
 
 その他の作用 抗酸化力はない。パチュリ油をベースにしたスプレー剤が、入院中の患者の気分を明るくしたという報告がある。
 パチュリ油を蒸散させてマウスに嗅がせたところ、その動作が目立って活発化したとの例がある。
 
随想①
 私は、パチュリ油の香りを嗅ぐたびに、江戸時代の俳人、与謝蕪村(よさ・ぶそん)の『白梅(はくばい)や墨芳(かんば)しき鴻臚館(こうろかん)』という句を思い出す。鴻臚館とは王朝時代、外国使臣接待のため、太宰府、京都、難波の3カ所に設けられた迎賓館。白梅香る鴻臚館の広間で、内外の貴紳が集まり、詩文の献酬が交わされ、芳しい墨の香りが部屋のなかにゆかしく漂うようすを詠んだ秀句である。この墨の香りこそ、パチュリ油の芳香なのである。加えて白梅の花の香りも流れ、白い梅の花と墨痕の黒さとの対比も連想させ、蕪村の共感覚的なところを匂わせて、私を酔わせて止まない。
 
随想②
 インドなどでは、衣服や枕などにこのパチュリ油で香りづけをする。
 インドから英国に送られたショールには、パチュリの香りがして(ウール地を食う虫よけにパチュリの葉をそのままはさんだらしい)、それが英国人の心を捉えた。私も、こどものころ母が持っていたこの香りのするショールをいつも思い出す。中国伝統医学では、このパチュリ(藿香〔かっこう〕)を感冒、嘔吐、下痢、産前産後の腹痛などに用いる。 

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