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2014年7月29日火曜日

バラ | 精油・アブソリュート類を買うときには注意して!(23)

バラ油
 
 バラ油と一口に言っても、さまざまな種類がある。
 ◎ ブルガリアン ローズ油、ダマスク ローズ油、ローズ オットー、ターキッシュ ローズ油(いずれも同じ種類のバラ油)
 ・学名 上記のバラはRosa damascena(ロサ・ダマスケナ〔ダマセナなどとは決して発音しないこと〕。ダマスクローズの意)
 ◎ フレンチ ローズ油、モロカンローズ油、キャベジ ローズ油(いずれも同じ種類のバラ油)
 ・学名 上記のバラはRosa centifolia(ロサ・ケンティフォリア、100も花弁をもつ〔これは大げさだが〕バラの意)
 ◎そのほかのバラ油 ガリカバラ油(これをフレンチローズ油としている人もいる)
 Rosa gallica(ロサ・ガリカ) ガリカバラ(ガリア〔今日のフランス・スイス〕のバラの意)
 Rosa alba(ロサ・アルバ) アルババラ(白バラの意)
 
 バラはバラ科の双子葉植物で、落葉または常緑の低木。またはつる性の木本。
 茎・葉にトゲが多い。北半球の亜寒帯から熱帯にかけて分布。200種の野生種がある。美しい香り高い花をつけ、香料の原料にもされる。
 現在、私たちが目にするバラは、複雑な交配育種(ことに1800年以降の)の結果、つくられたものである。日本古来のバラとしてはノイバラ、テリハノイバラ、タカネバラ、ハマナスなど十数種があげられる。
 
 精油 早朝(おそくとも午前10時ごろまで)に採取したバラの花を水蒸気蒸留して抽出。ブルガリアはバラ(ダマスクローズ)の名産地で、この地を支配していたトルコ人が持ち込んだものである。
 アブソリュート ベンゼン、アセトン、四塩化炭素、石油エーテルなどの有機溶剤にバラの花弁を浸し、花のワックスと芳香成分とが一体になった「コンクリート」をつくり、これを78℃で沸騰するエチルアルコールで蒸留してアブソリュートを得る。アブソリュートは、最終産物に発ガン性溶剤が残るため、原則としてアロマテラピーでは用いられない。
 
主要成分(%で示す) 各種のバラの大まかな目安と考えて頂きたい。
              バラ油     バラアブソリュート
 シトロネロール     18〜55      18〜22
 ゲラニオール      12〜40      10〜15
 ネロール         3〜9        3〜9
 フェニルエチルアルコール 1〜3       60〜65
 ステアロプテン       0         8〜22
 
 微小成分(精油・アブソリュート)
 ローズオキシド  0.1〜0.5
 β-ダマスコン   0.01
 β-ダマスケノン  0.14
 β-イオノン    痕跡量〜0.03
 
 注 バラ油には、少なく見積もっても300種もの成分が含まれている。
 そのうち、わずか0.14%しか含まれていないβ-ダマスケノンが、あのバラのいかにもバラらしい香りのもととなっている。
 
・偽和の問題
 精油にせよアブソリュートにせよ、バラは市場でもっとも高価なものの一つなので、偽和の技術も巧妙を極めていて、看破するのは容易ではない。偽和には、数多くの合成化学物質が用いられ、少量の真正成分を大幅に増量させている。いずれも合成したフェニルエチルアルコール、ジエチルフタレート、シトロネロール、ゲラニオール、イソオイゲノール、ヘリオトロピン、シクラマール、アミルサリチレートが多量に加えられ、さらにゼラニウム油からとったロジノールなども添加したものが「バラ油」と称して売られているものの大半だ。まず日本では100%純粋なバラ油というものは、もはや入手不可能だと思っていただきたい。
 アブソリュートもパルマローザ油の成分(というか、やはり合成したもの)、ペルーバルサム油、コスタス油、クローブ花芽油などを加えて偽和するのが、当然のように行われている。
 ローズオットーも、最初に蒸留した真正バラ油と、再留したバラ油とを組み合わせてフェニルエチルアルコール分を大幅に水増ししてあるのがふつうである。「バラ油」にせよ、「バラ アブソリュート」にせよ、薬効を期待するならもっとずっと安価な別の精油を利用した方が、フトコロも痛まないし、体にも良いだろう。
 
・毒性
 LD50値
  Rosa damascena および R. centifoliaの各精油では
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで2.5g/kg(経皮)
  Rosa centifoliaのアブソリュートでは
   ラットで>5g/kg(経口)
   経皮値は定かでない。
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて2%濃度で認められず(精油・アブソリュートの双方とも)。
 
 光毒性
  報告例なし。
 
・作用(もちろんホンモノでなければ、いわゆる「効果」など論じるのはナンセンスである)
 薬理作用 各種のバラ油・アブソリュートで、モルモットの回腸においてin vivoで鎮痙作用が認められた。
 抗菌効果 ブルガリアのカザンリク産のRosa damascenaで若干の抗菌作用が確認されている。
 
 抗真菌効果 報告例なし。
 
 その他の作用 バラ油はマウスの活動に一切影響を及ぼさなかった。CNVでも特段の鎮静ないし刺激効果は示さないことがわかった。
 この精油は女性の冷感症と男性のインポテンスに有効と言われるが、正確なデータに基づいた報告ではない(第一、このような秘事の正確なデータなど、どうすればとれるというのだろう)。 
 また、この精油は女性特有の各種疾患に有効だとされるが、あまり大げさに受け止めるべきではないと思う。理由は、おおむね上に述べたことと同様である。

2014年7月1日火曜日

インドシナ戦争時のジャン・バルネ博士

Dr Jean Valnet at Vinh-Yen.ベトナムのトンキン軍管区第1前進外科処置部隊主任として負傷兵の処置にあたる軍医隊長、ジャン・バルネ大尉(ヴィン=イェンの戦闘において)
photo : Ch.K.女史提供 
 
 
 
インドシナ戦争時のジャン・バルネ博士
 高山 林太郎
 
 1946年から54年にかけて、新たに建国したベトナム民主共和国が、インドシナの支配権の回復をもくろむフランスに対して行った独立戦争をインドシナ戦争という。
 米国からの膨大な援助資金と武器との支援をうけて、制空権を握ったにもかかわらず、54年5月ディエンビエンフーでの決戦で、フランス軍は大敗した。
 思えば、ナポレオンがロシアで大敗して以降のフランス軍は、ヘナヘナというイメージしかない。
 
 このフランス軍のほとんどは、いわゆる「外人部隊」(旧ナチスドイツ兵、アルジェリア兵、南ベトナムで徴兵した兵士など)からなっていた。旧ナチスドイツ兵は第二次大戦中、東部戦線でソ連軍に徹底的に粉砕され、祖国ドイツは米英空軍の猛爆で廃墟同然になり、働き口もなかったので、やむなく昨日まで自分たちが支配していたフランスの、その外人部隊に自分の身体と命とを売ったのだ。
 つい先日まで自分たちにペコペコしていたフランス人にアゴでこき使われるドイツ人たちは、なんの恨みもないベトナム人を相手に、地球の裏側で、ド・カストリなる焼酎みたいな名前のフランス軍司令官の命令下で戦わされた。戦意などわくわけがない。ドイツ人たちはヤケになってナチスの軍歌を高唱していた。体格も貧弱なベトナム兵の闘志には、最新式の米国製の航空機も大砲も歯が立たなかった。
 このベトナム兵たちの戦いを見たジャン・バルネが、自分自身パルチザン兵として活躍したおのれのかつての姿をそこに重ね合わせなかったはずはない。とはいえ、フランス軍の軍医大尉として、ジャン・バルネは負傷者たちの手当てに懸命にあたった。
 大国フランスは、弱小なベトナム民主共和国に敗北した。ド・カストリ司令官は、ベトナム軍の捕虜の身となった。帝国主義・植民地主義の時代は終わったのである(それにつづくベトナム戦での米国の悪あがきやアルジェリアの対仏独立戦争などはあったが)。
 
 このとき、ジャン・バルネは、オーストラリア・ニュージーランドから送られてきたティートリー油などの精油を実験的に「初めて」使用し、アロマテラピーを実践した。第二次大戦中から彼がアロマテラピーを行っていたように言う人間もいるが、みんな嘘八百だ。
 ジャン・バルネの心中を察するに、これ以降、ほとほと彼は戦争が嫌になったのだろう。政府はレジオン・ドヌール勲章を贈って彼をひきとめようとしたが、ジャン・バルネは軍籍を離れ、民間の病院医となった。彼は決してベトナム人を殺さなかった。第二次大戦中もパルチザンの衛生兵として、祖国のために尽力した。しかし、みずからの手でドイツ兵を殺傷したわけではない。このときは、友軍のため、同志のためにペニシリンを配布し、ドイツに降伏して、その傀儡になった時のフランスのヴィシー政権にさからって、傷ついた戦友たちの命を救ったのである。
 ハーバリストのモーリス・メッセゲは、南仏の一介の民間人にすぎなかったが、ナチスドイツの収容所に送られそうになったときに脱走し、パルチザンの一員となった。彼は自分の手に余るようなサイズの拳銃を与えられ、ドイツ兵を狙撃しようとしたが、ついにその引き金を引けなかったと告白している。
 
 医学により、民間の医術により、人を健康にしようとし、人間の命を救おうと心の底から思うものには、どんな理由があろうとも、人の命を奪うことなどできないのだ。
 この二人のことを考える私は、そう信じて疑わない。アロマテラピーを研究し、実践しているみなさんも、きっと同じ考えをお持ちのことと思う。 
 
なお、民間医となったジャン・バルネ博士は、現代薬学の花形とされた抗生物質剤の使用に疑問を持つようになり「よほど差し迫った状況でないかぎり、抗生物質剤を使わないように」と主張した。
博士は1995年に死去するまで、このことを強く訴え続けた。「植物=芳香療法」は博士にとって抗生物質療法に対する代案の一つだったのである。
母を抗生物質クロラムフェニコールの副作用で失った私の心に、博士のこの言葉は重く響いた。

そして、博士はアロマテラピーを復権させ、これを広めようと本を書いたり、民間の病院で密かに実践したりしたことも付け加えておきたい。
精神病院を含む各種の病院でこれを実践しながら、フランス伝統の植物療法を質的にブレイクスルーさせるものとして、つまりアトミックな植物療法としてのアロマテラピーの体系を構築していったのである。
博士が、雑誌記者のインタビューに答えて、ルネ=モーリス・ガットフォセのいう「アロマテラピー」からはその名前を除いては一切影響を受けていない、と言っているのはそのことを意味しているのだろう。
これが、バルネ博士をアロマテラピーの中興の祖と私が呼ぶゆえんである。

2014年4月30日水曜日

出版関係の皆さまへ、高山林太郎からのお願い【『フランス・アロマテラピー大全』の復刊について】

いま、本もののアロマテラピー学習書・研究書を望む人びとが渇望している本を刊行して下さる志の高い出版社を、ここに公募いたします。この名著をしのぐ書物は、あと10年はまず出ないでしょう。
 
その名著とは、
 
 
 ロジェ・ジョロア/編著
 ダニエル・ペノエル医学博士/医学監修
 ピエール・フランコム/科学監修
 
 『フランス・アロマテラピー大全 上・中・下巻(いずれも絶版)
 (原題:l’ aromathérapie exactement)
 
 
 
です。
 
私は、この世界最高峰のフランスのアロマテラピー学習書・研究書の訳出に、文字通り心血をそそぎました。多くの真に科学的思考ができる方がたから、「もはや、あと四半世紀は、この書を凌駕(りょうが)するものは、全世界的に刊行されないだろう」とさえ評された「幻の書」がこれです。
なお、この本はフランス語の原書から他国語に訳された世界唯一の本です。
 
この書物を復刊してほしい、再刊してほしいとお望みの方がたが、私に絶えず強くその要望をお寄せになっています(この私の2013年5月21日からスタートしたブログの閲覧数を参考になさって下さい)。
 
無理もありません。
現在、書店の棚に並んでいる「アロマテラピー関連書」と称する本は、ほとんどおしなべて俗悪・低劣・愚劣なものばかりです。
手にとって見る値打ちなど、まるでない消耗品、ないし文化的産物としての資格など完全に欠落した雑貨品にすぎません。
 
そうした書籍の出版社は、失礼ながら、いかがわしい日本アロマ○×協会などの「インストラクター」だの「アドバイザー」だのという、国家資格でも何でもない、はっきり言って何の役にも立たない資格を試験を受けさせて売りつけたあげく、定期的に高いお金をその「協会」に上納しなければ、遠慮なくその資格すら奪い取ってしまう、悪らつなアロマ協会の「資格」商売に奉仕するだけの、およそ出版社としての、文化の向上、進展に資することをめざす本来の使命を忘れた存在と言わざるを得ません。
 
出版人としてのプライドを、志をお持ちの方がたは、そんな「受験参考書」などを刊行なさっても、たちまち春の淡雪と消え去り、日本の文化史にその著書も貴社の名も一切残らないことは、申すまでもなく十二分にご承知のことと拝察いたします。
 
このアロマテラピーの世界的名著は、志が本当に高い出版社さまがお望みなら、いますぐにでも刊行できます。私は、訳者として責任をもって、原著者たちとも相談しながら、あらんかぎりのご協力をさせて頂きます。
 
 先に刊行した本書の上・中・下巻の3巻をまとめて1巻にし、手にとりやすい価格帯にしたいという構想もあります。
ぜひともご相談下さい。 
 
ご興味をお寄せの出版関係の方がたは、下記に早々にご連絡頂きとう存じます。
高山林太郎
    (携帯電話)080-5424-2837
または (固定電話)042-482-1179
 

2013年6月27日木曜日

フランスのアロマテラピーの現状について

越中富山の反魂丹(はんごんたん)
鼻糞丸めて万金丹(まんきんたん)
それを呑む奴ァアンポンタン
 
むかし、富山は薬を製造する産業が盛んだった(まあ、いまもそうだろうが)。その薬は主として大坂に流れ、大坂には薬問屋がたくさんできた。薬品会社が関西に多いのは、そうした歴史があるからだ。富山大学の薬学部が有名なのも、それに関連がある。
 
上掲の俗謡も、そうした背景から生まれた。
 
むかしは、いまのように薬品を、その原料などを国家で定められた基準に従って薬屋が作るなどということは決してなかった。
 
農民や山林の民などは、そんな薬もほとんど買えなかったから、身近な薬草(ドクダミ、ゲンノショウコ、オトギリソウなど)をさまざまに工夫して薬用した。
 
私もこどものころ、栄養不足が原因の免疫不全からか、やたらに体に膿をもつ腫れ物ができた。
 
母は、そんな私の体中の患部にドクダミを焼いてベトベトにしたものを貼りつけた。すると、膿が排出されて、できものがなおるのだった。
 
『アロマテラピー図解事典』( 岩城都子[松田さと子]著、高橋書店刊)という本を書店で立ち読みしたところ、「アロマテラピー先進国であるフランスでは、ドクターが医療現場で精油の効果効能を利用、クライアント(ペイシェントというべきではないか-高山)の治療に使われています」とか、「医療の現場で利用されている」とかと書かれている。
 
アロマテラピーの発祥の地であるフランスでは、医師による『メディカルアロマテラピー』が確立。精油は薬局で処方され、内服も認められている。予防医学のカギを握るものとして普及している」とかといった、私には信じられないようなことが述べられている。
 
これは、考えにくいことだと私は早速これを刊行した書店にたずねた。
 
書店では、英国在住の著者に問い合せてくれた。仏人医師のひとりのその著者への答えとしてこの本の著者は私に以下のように知らせてきた。
To make things simple and clear, I prefer to let you know that medical aromatherapy is mainly practiced by doctors.(MDs) in private practices than in hospitals.
 
In some hospitals, the way essential oils are used is more as a side therapy for the patient's comfort or well being, but not really for the medical treatment itself.
 
In private practices, it is very different, and hundreds of private MDs use essential oils for medical situations, mainly infection (infectious ではないかな?-高山)diseases, with great success.
つまり、病院よりも市井の開業医などが私的にアロマテラピーを行っていること、病院でもいくつか、このテラピーを行っているといころはあるものの、主たる治療ではなく、あくまで患者の気分をよくするサイド療法として行っていること、そして、病院ではなく、プライベートにアロマテラピーを実践している数百名の医師たちは、精油類を感染症に使用して、大きな成功を収めている、というわけである。
 
すると、いくつも疑問が生じる。
 
まず、第一に、フランスの薬局方では、精油の使用を認めているのかということ。
 
民間医療は、各人が自分の責任で家族に施してもよいだろう(しかし、公的な病院を受診しなければならぬ疾病まで家族だからという理由で自己流の療法を施し、その結果重大な結果を生じさせたら、刑事責任が問われるはずである)。
 
つぎに、薬局方で精油の使用が認可されているなら、その精油はどんな基準を満たしているのかということ。(そんな医薬品グレードの精油が本当に存在するのか? どんなメーカーがどんな基準に従って作ったものか? AFNOR規格などの基準を満たしたといっても、それが医療品グレードということとは、全く別のことだ。この規格はいくつかのマーカー成分の存在と分量を確認するだけのものに過ぎない)。
 
精油のように、年々歳々その構成成分が変化するような不安定なものを、誰が、どんな根拠で、「薬剤」としてフランス全土の病院・医院で利用するのを許しているのか。
 
そんなことで、医師は責任ある治療ができるのか。日本だったら絶対に考えられないことだ。そこをぜひ問いたい。そもそも、そんな完璧な医薬品グレードの精油が作れる会社がもしあったら、世界中のアロマテラピー関係者は、それしか用いなくなるだろう。
 
だいたい、ジェネリック医薬品すら、それでは責任をもって治療にあたれないという医師も日本にはたくさんいる。フランスでは、そんな初歩的なことも医師は考えないのか。
 
中医学(中国伝統医学。しかし、漢方医学は中国伝統医学から枝分かれした別物となっている)やアロマテラピーなどは、いまの公的に是認されている現代医学とは根本的に異なった医療哲学のうえに成り立っている。その方針で治療にあたるというなら、筋が通っている。
 
だが、何でもかんでも効けばいいのだろうという考え方は危険だ。
漢方製剤(元来は中国伝統医学の処方)を販売している某大手会社のように、漢方製剤を用いるなら、本来は中国伝統医学理論に基づいて患者にそれを投与しなければならない。
 
それなのに、その製薬会社は、中国伝統医学から生まれた漢方製剤の使用にあたり医師たちにその理論を一切説かなかった(いまはどうなっているのか知らないが)。そのために、多くの死者を出す事態を招いた。患者の中には小柴胡湯エキスにより間質性肺炎という病気で死亡するものが続出したのである。この事件とは関係ないが、あの美空ひばりもこの間質性肺炎で亡くなっている。
 
三流週刊誌(私は週刊誌はすべて三流と考えている)は、「漢方薬に副作用がないという神話が崩れた!」と、騒いだ。
 
バカ記者の無知はいまさら救いようがない。それはどうでもよいが、フランスで、そんなに無原則的にアロマテラピーを現代医学に併用しているとすれば、フランスは現代医学を実践している国々のなかで、もっとも遅れていると言わざるを得ない。
 
英国の医師で「自分はアロマテラピーを行っている」などという人間は皆無だ。英国の医師は賢明だからだ。
 
フランスの薬局方で精油が認められているというなら、何の精油と何の精油か、そこを聞かせてもらおう(まさか精油ならなんでもOK、そんなことはなかろう)。そして患者にその内服もさせるというなら、そのアロマテラピーで万一事故が発生した場合、その医師はどんな処分を受けるのか、逮捕され実刑を宣告されるのか? 医師免許を剥奪されるのか? そこまではっきり調べてからものを書くべきだろう。
 
アロマテラピーを、ただのファッショナブルなおしゃれとして、香水利用の延長線上で考えているような人間は、くだらぬ本など出すべきでない。多くの人を誤解させるもととなる犯罪的な行為だと私は断じる。反論があるならうけたまわろう。