2014年5月14日水曜日

セージ(薬用サルビア) | 精油類を買うときには注意して!⑭

セージ(Salvia officinalis)油
 
セージはシソ科の小低木。古代からヨーロッパでその葉は香味料として(ソーセージづくりには不可欠。もっともソーセージのセージは、「塩」を意味するラテン語に由来する)、また薬として使われてきた。ローマ人は、ヘルバ・サクラherba sacra(聖なる草)とも呼んだ。salviaはsalvation(「救い」を意味する英語)と同じ語源から来ている。
英語では、これをダルメシアンセージ、トルーセージ、レッドセージ、イングリッシュセージともいう。
この原産地は英国とされる。グループサウンズのサイモン&ガーファンクルのヒットソング「スカボローフェア」の「パスリ、セージ、ローズマリー、アンド、タイム」というリフレインの歌詞は有名だ。
 
これと近縁の別種の“セージ”として、スパニッシュセージ(Salvia lavandulaefolia)があり、これもアロマテラピーで使用されることがときどきある。原産地はスペインである。
 
いずれも生乾き状態の葉を水蒸気蒸留して精油をとる。
 
 
主要成分(%で示す)
          ダルメシアン種   スパニッシュ種
 1,8-シネオール    8〜24     18〜54
 α-ツヨン        15〜48      0
 β-ツヨン        2〜25      0
 カンファー       2〜27     1〜36
 リナロール       0〜32      0〜9
 α-ピネン         痕跡量      4〜20
 β-ピネン         痕跡量      6〜19
 カンフェン        痕跡量        4〜30
 p-シメン         痕跡量      1〜5
 
ごらんのように、これら2種のセージはそれぞれ成分に差があるだけでなく、クラリセージ油ともちがった組成をしている。

・偽和の問題
 ダルメシアンセージ油は、これとは別種のグリークセージ(Salvia triloba)の精油で偽和されることがよくある。グリークセージは、1,8-シネオール含量が42〜64%にも達する。また、ヴァージニアン シダーウッド油または前述のグリークセージ油から分離したツヨンを添加することも多い。パルマローザ(Cymbopogon martinii)油を加えることも往々ある。人間の悪知恵にはキリがありません。
 
・毒性
 LD50値
 ダルメシアンセージ油  ラットで2.6g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
 スパニッシュセージ油  ラットで>5g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 グリークセージについてはまだ報告例がない。
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて8%濃度で、これらは認められなかった。
 光毒性
  スパニッシュセージ油は、光毒性はない。ダルメシアンセージ油については、いまだに試験例がない。
 その他
  ツヨンは、ふつう有毒とみなされている。しかし、α-ツヨン、β-ツヨンとも、英米では食品用香料として、ごく少量ならば、その使用が許されている。
  含有ツヨン分のせいで中毒患者を多くだしたフランスのアブサン酒のほうは、1915年に製造が禁止されている。しかし、そのもとになったヒソップ(Hyssopus officinalis)は、この生育地によってツヨン分をほとんど、あるいはまったく含まないケモタイプがある。フランスの有名なリキュールの「シャルトルーズ」は、そうしたヒソップを使っているので、これまで、何もトラブルをおこした例はない。
  セージはツヨンを多く含むので、多量に摂取すると中枢神経系に毒性を示し、麻痺を惹起する。特に女性はツヨンに弱いらしく、セージ油を用いたマッサージをうけたり、沐浴用に多くて10滴湯に落として用いたりしただけで腹痛に襲われたり(子宮の異常収縮に起因するものだ)、ひどい月経過多になったりしたケースが報告されている。多くのセラピストは、このためにこれに代えてクラリセージ油を利用している。ダルメシアンセージ油は幼児に使ってはダメ。癲癇(てんかん)の素質のある人間に使用するのも、妊娠中の女性に用いるのも、いずれも禁忌。
  また、食品添加物として許されるのは、体重1kgあたり10mgから35mgの範囲である。添加量を10mg/kg以下にしなければならないのは、アルコール飲料だ。
ダルメシアンセージよりもはるかに安全な、近縁のクラリセージ油を用いてマッサージをうけたあとでも、アルコール飲料を摂取すると、ひどく悪酔いする。クラリセージ油を用いたマッサージを受けた後、車を運転するのもいけないといっている人もいる。
 
・作用
 ダルメシアン・スパニッシュの両セージは、体内からとりだしたモルモットの回腸で痙攣惹起作用を示した。
 抗菌作用   細菌の種類にもよるが、総じてあまり強いとはいえない。
 抗真菌作用  真菌の種類によって、さまざまである。
 駆風作用   両種のセージとも、この働きを示した。
 酸化防止作用 ダルメシアンセージに、これが認められる。
 痙攣惹起作用 ラットでもヒトでも、多量に使うと痙攣をひきおこす。内用はもとより、外用でもそうである。 

2014年5月7日水曜日

ジュニパー | 精油類を買うときには注意して!⑬

ジュニパー(Juniperus communis)油
 
 
ヒノキ科の低木で、成熟(2〜3年で実をつけるまでに成熟)すると、甘い液果を実らせるジュニパー。乾燥させて細かく砕いたこの液果を、水蒸気蒸留してこの精油を抽出する。液果を発酵させて抽出した成分は、ジン・ブランデーに添加される。本来は、これらは熱病になどに用いる薬用酒であった。
和名は、セイヨウネズ。木部からも精油を抽出するが、これはたいていより高価な液果油の増量のために利用される。
 
原産地
 ハンガリーをはじめとするヨーロッパ諸国
 
 
主要成分(%で示す)
 α-ピネン       33〜71
 サビネン       0.3〜27
 ミルセン         5〜18
 リモネン       2〜9
 γ-テルピネン       0.3〜3.7
 テルピネン-4-オール  4〜10
 
 
・偽和の問題
 ジュニパー油(厳密にはジュニパー液果油)の真正品は、めったに売っていない。たいていは、合成したピネン、カンフェン、ミルセン、それにターペンタイン油の留分などが加えられたしろものだ。上述したジュニパー木部油、またジュニパーの小枝から水蒸気蒸留抽出した精油も、この偽和(増量)の目的で用いる。あなたのお手持ちのジュニパー油は、失礼ながらまずまちがいなくこの手の品である。
 
 
・毒性
 LD50値
 ラットで8g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性  ヒトにおいて8%濃度で、これらは認められなかった。100%濃度で、20人を対象にして行ったテスト(24時間にわたって実施)でも、刺激性が発現したものは、そのうちの2名にとどまった。
 光毒性  認められない。
 
 
・作用
 薬理学的作用  ジュニパー液果油の場合、若干の痙攣惹起効果がみられた。
 抗菌作用    報告されていない。これに殺菌作用があるなどという人間のコトバを信じてはいけない。
 抗真菌作用   真菌の種類を問わず、あまり強くない。
 利尿作用    腎臓の所に適度に稀釈して塗布するとよいが、腎臓に疾患のある人間には禁忌。
 そのほか特筆すべき作用・効果は、報告されていない。
 
 ジュニパー油は駆風作用があり、鼓腸・疝痛の際に用いると効果的。痔疾にも、この精油をぬるま油に数滴落として肛門と患部周辺を洗うと良い。浸出性湿疹にも有効である。
 
 また、これはハーブ療法に属することだが、ハーブティー用に市販されているジュニパーの乾燥果を乳鉢などで5〜6粒、すりつぶして、水で飲みこむと、血糖値がドラスティックに下がったケースが日本であった。1日に3〜4回このジュニパー液果粉末を服用するとよい。その患者のかかりつけの医師が驚いたそうである。 

2014年4月30日水曜日

出版関係の皆さまへ、高山林太郎からのお願い【『フランス・アロマテラピー大全』の復刊について】

いま、本もののアロマテラピー学習書・研究書を望む人びとが渇望している本を刊行して下さる志の高い出版社を、ここに公募いたします。この名著をしのぐ書物は、あと10年はまず出ないでしょう。
 
その名著とは、
 
 
 ロジェ・ジョロア/編著
 ダニエル・ペノエル医学博士/医学監修
 ピエール・フランコム/科学監修
 
 『フランス・アロマテラピー大全 上・中・下巻(いずれも絶版)
 (原題:l’ aromathérapie exactement)
 
 
 
です。
 
私は、この世界最高峰のフランスのアロマテラピー学習書・研究書の訳出に、文字通り心血をそそぎました。多くの真に科学的思考ができる方がたから、「もはや、あと四半世紀は、この書を凌駕(りょうが)するものは、全世界的に刊行されないだろう」とさえ評された「幻の書」がこれです。
なお、この本はフランス語の原書から他国語に訳された世界唯一の本です。
 
この書物を復刊してほしい、再刊してほしいとお望みの方がたが、私に絶えず強くその要望をお寄せになっています(この私の2013年5月21日からスタートしたブログの閲覧数を参考になさって下さい)。
 
無理もありません。
現在、書店の棚に並んでいる「アロマテラピー関連書」と称する本は、ほとんどおしなべて俗悪・低劣・愚劣なものばかりです。
手にとって見る値打ちなど、まるでない消耗品、ないし文化的産物としての資格など完全に欠落した雑貨品にすぎません。
 
そうした書籍の出版社は、失礼ながら、いかがわしい日本アロマ○×協会などの「インストラクター」だの「アドバイザー」だのという、国家資格でも何でもない、はっきり言って何の役にも立たない資格を試験を受けさせて売りつけたあげく、定期的に高いお金をその「協会」に上納しなければ、遠慮なくその資格すら奪い取ってしまう、悪らつなアロマ協会の「資格」商売に奉仕するだけの、およそ出版社としての、文化の向上、進展に資することをめざす本来の使命を忘れた存在と言わざるを得ません。
 
出版人としてのプライドを、志をお持ちの方がたは、そんな「受験参考書」などを刊行なさっても、たちまち春の淡雪と消え去り、日本の文化史にその著書も貴社の名も一切残らないことは、申すまでもなく十二分にご承知のことと拝察いたします。
 
このアロマテラピーの世界的名著は、志が本当に高い出版社さまがお望みなら、いますぐにでも刊行できます。私は、訳者として責任をもって、原著者たちとも相談しながら、あらんかぎりのご協力をさせて頂きます。
 
 先に刊行した本書の上・中・下巻の3巻をまとめて1巻にし、手にとりやすい価格帯にしたいという構想もあります。
ぜひともご相談下さい。 
 
ご興味をお寄せの出版関係の方がたは、下記に早々にご連絡頂きとう存じます。
高山林太郎
    (携帯電話)080-5424-2837
または (固定電話)042-482-1179
 

2014年4月23日水曜日

ジャスミン | アブソリュートを買うときには注意して!⑫

ジャスミン(Jasminum officinale var. grandiflorum、原種は J. officinale)アブソリュート
 
このモクセイ科の常緑小低木ジャスミンは、オオバナソケイ(素馨)といわれ、ソケイ属の植物である(カタロニアジャスミン、イタリアジャスミンとも呼ばれる)。ジャスミンの原種であるJ. officinale(ポエッツジャスミン〔poet’s jasmine〕、コモンホワイトジャスミン〔common white jasmine〕と俗称される)は厳密にはこれとは別物であるが、香りにほとんど違いがなく前者とだいたい同一視され、香料用にされる。
前者(J. officinale var. grandiflorum)のほうは、花の直径が最大3.5cmにもなる。原種のJ. officinaleは花の直径が最大2.5cmのため、効率よく芳香成分をとるために前者のほうがひろく栽培される
中国産のジャスミンは素馨(そけい)で、茉莉(マーリー)は、その一部に属する。その学名は、J. sambac。茉莉花(マーリーホワ)は中国人に愛される花の一つで、このつぼみを茶に入れた茉莉花茶は美味である。日本で市販されているペットボトル入りのジャスミン茶は合成香料しか入っていないニセモノだ。
 
茉莉は、学問的にはアラビアジャスミンという。中国民謡『茉莉花』は古来愛唱されてきた。アグネス・チャンのこの歌は、一度聴く値打ちがある(関係ないか)。
 
花の香りの女王をバラとすれば、ジャスミンはさしずめ花香の王だろう。ジャスミンの原産地は、アフリカ・アジアの亜熱帯・熱帯地方で、その種類は300種を数える。
白や黄などの小さい花を咲かせるものがあり、そのうちひときわ強い芳香を放つ種類がある。そこで、これが香水とか茶の付香などに利用される。
 
ジャスミンの花にはいくつもの香気成分が含まれる。とくにジャスミンの特徴的な香りのもととなるcis-ジャスモンはいまだに工業的に生産する方法が確立されていないので、これを使った香料はきわめて高価である。
これがジャスミンのアブソリュートがアロマテラピーではほとんど使われていない理由の一つである。
しかし、これには後述するもっと重大なわけがある。
 
このジャスミンの産地の一つ、エジプトでは午前3時ごろから10歳未満の少年たちが袋を背負って、午前9時ごろまでの間に花を一つ一つ手摘みして袋に入れる。腕のいい子は、その時間で7万個の花を摘む。そして、その賃金は極めて低い。モロッコ、インドなどでも同様である。花はバラなどと違って、ごく小さい。私はこの花を見ると日本のテイカカズラを連想する。
 
花700kgから、ようやく1kgのアブソリュートが抽出される。花の数にすると数百万個になるだろう。高価なわけだ。明け方に黙々と摘花する少年たちを思うと、私は何か悲しみ・怒りをおしとどめることができない。もちろん、香りのもつ文化史的な意味は十分わかっているつもりではある私だが。
そうして集めた花は、アセトン、ヘキサン、四塩化炭素、石油エーテル、ベンゼンといった、発ガン性有機溶剤で処理してコンクリートというもの(花のワックスと芳香成分の混合体)の形態にして、これをエチルアルコールで摂氏78度ほどで蒸留すると、アブソリュートが得られる。
このアブソリュートを使った有名な高級香水が、ジャン・パトゥー社の”JOY”である。
 
茉莉花は、華南・台湾・インドネシアなどで栽培され、早朝つぼみの状態のときに採取され、烏龍茶に着香するために利用される。
 
むかしは、ジャスミンの花を獣脂と植物油とに混ぜたものに根気よく何度も貼り付けて、その芳香成分を移して、それをエタノールで蒸留していたので問題はなかったが、現在では、これは手間と人件費がかかりすぎるので、このメソッドを採用している会社はいまは世界にたった1社しかないと聞く。この方法をアンフルラージュと呼ぶ。これは冷浸法と訳される。
 
したがって、有機溶剤抽出法が主流になった現在、アブソリュートは、バラなどとともにジャスミンもあまりアロマテラピーでは用いられない。最終製品に発ガン性物質が残留するからだ。マギー・ティスランドなどは紅茶にジャスミンアブソリュートを入れて飲むことを賞揚しているが、そうした危険性をどの程度認識しているのか、不安である(香水のように、ほんの少し、それもタマにしか体表につけないものなら問題にはならないが)。
ジャン・バルネ博士は、冗談半分だろうが、ジャスミンを内用すると、糞便がジャスミン香を発するようになると書いている。
 
 
主要成分(%で示す)
 ベンジルベンゾエート 11.5
 ベンジルアセテート  25.8
 リナロール      4.6
 インドール      3.7
 オイゲノール      2.6
 cis-ジャスモン      2.4
 ファルネセン     2.0
 ファイトール類    27.9
 
・偽和の問題
 真正のジャスミンアブソリュートは、なんといっても高いので、多くの成分が偽造される。偽和はインドール(糞便臭のもとの成分。自分のウンチから採ればよさそうだが、やっぱり合成する)、合成シンナミックアルデヒド、イランイランのカスみたいな留分などを用いて偽和する。合成ジャスミンは、しつこい、いやらしい甘さがして、文字どおり安っぽい香りがあり、すぐにわかる。わからない人は香水を熟知している人に尋ねて、そんな成分で作った香水をつけるのは控えて欲しい。他人の迷惑になるから。
 
・毒性
 LD50値
 ラットで>5g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
 光毒性は報告例はない。
 
・効果
 薬理学的作用 生体から摘出したモルモットの回腸において、痙攣惹起作用を示した。
 殺菌作用 報告されていない。
 抗真菌作用 報告されていない。
 その他の作用 CNV(随伴性陰性変動)によって、刺激作用があることがわかっている。
 
なお、パトリシア・デービスによれば、ジャスミンアブソリュートには子宮強壮作用があり、月経痛を鎮める力がある。また、出産時にこれを腹部にマッサージすることで、苦痛を軽減でき、収縮を強め、出産を助け、胎盤の排出を促すとともに、産後の回復を助けるという。またこれらには抗うつ作用があるために「マタニティー・ブルー」を好転させるのにも有効だそうだ。
ジャスミンはまた、ことに男性に催淫作用を示す。これはジャスミンに不安や恐れ、うつといった性欲を抑制するファクターを軽減ないし解消する力があるためである。
 
・思い出
 ① どうでもよいことだが、東京・飯田橋にインドカレーでけっこう有名な店があった(いまはどうか知らないが)。その店名は「インドール」といった。私は好奇心が旺盛なので、一度寄ろうと思いながら果たせずにいる。実は、このインドールというのはインド中部の都市名Indoreからとったもので、ジャスミンの成分indoleとは無関係である。
 
 ② また日本アロマ○○協会の講演で、ある学者とおぼしき男が、ジャスミンをわざわざ水蒸気蒸留した結果を大まじめで報告した。私は思わず、何でそんなことをするのか尋ねた。すると、隣席のこれまたウスラバカづらの学者らしき男が「実験的にトクベツに行ったんですよ!」と私を叱った。なるほど、先人の行ったことでアタリマエとされているものでも、何度でも疑問をもって再現実験・追試すること自体は決して悪くはない。科学的精神のあらわれである。
 
しかし、16世紀以降、無数の人びとがジャスミンの花を水蒸気蒸留すれば多数の芳香形成成分が破壊され分解されて、香りがひどく劣化してしまうことを認めたからこそアンフルラージュとか有機溶剤抽出法とかを採用しているのだし、また当然20世紀生まれのアロマテラピーのための精油としても効力が大幅に落ちるであろうことは誰しもわかることだ。経験則というべきか。
こういう先生方は、ニュートンの万有引力の法則もついでに再試験してみられるとよい。
東京タワーか、最近できたスカイツリーなどの高いところから空中に飛び出してみて、地球に引力があるかどうか、我が身をもってシッカリ追試なさることを心からお勧めする。科学者の鑑と讃える奇特な人もいるかもしれない。
故・藤田忠男博士にこのことをお話ししたら、呵々大笑なさるはずだ。
そして、「だから、あの協会はダメだと見切りをつけて、会員たちが私のところに話を聞きに来るんですよ」とおっしゃることだろう。
 
付け加えておくが、この講演でジャスミン「精油」のほうが、アブソリュートよりも薬理学的に効果が高かったなどという発表など何一つなされなかった。「あたりまえすぎることをいうな」と識者からドヤされそうだ。世の中にはとかく学者を名乗るバカ者が多すぎる。高校の入試問題をこんなやつらに課してみれば、月給泥棒の化けの皮がハガレるだろう。そういうことをしない文科省は、そんな連中と共犯関係にある、なれ合い関係を持っているとみられてもしかたあるまい。 

2014年4月17日木曜日

シナモン | 精油類を買うときには注意して!⑪

シナモン(Cinnamomum zeylanicum、またはC. verum、Laurus cinnamomum)油
 
このクスノキ科の木本の樹皮または葉を蒸留して抽出した精油。
産地は、スリランカ、インド、インドネシアなど。
 
主要成分(%で示す)
           シナモン皮    シナモン葉
 α-ピネン       0.2〜0.6     0.2〜1.0
 β-シメン       0.6〜1.2     0.9〜1.2
 シンナムアルデヒド    74〜75    1.3〜2.0
 オイゲノール      0.8        70〜96
 シンナミルアセテート 5.0         0.8〜1.7
 カリオフィレン    1.4〜3.3     1.9〜5.8
 ベンジルベンゾエート 0.7〜1.0      2.7〜3.5
 
 シナモン皮油と葉油とでは、とくにシンナムアルデヒド、オイゲノールとの両含有成分において大差があるため、一方の代りに他方を用いることはできない。皮油は主成分としてシンナムアルデヒドを含むが、葉油のほうはオイゲノールを主要な成分とするために、クローブ花芽油に類似しているといえる。
 
・偽和の問題
 シナモン皮油は、シナモン葉油、カネラ皮油、クローブ葉油、合成オイゲノール、合成シンナムアルデヒドなどを加えてカットする(伸ばす、すなわち増量する)ことがよく行われている(カネラは西インド諸島産のシナモンに似たクスノキ科の木。その樹皮は白桂皮と称され、香味料・薬剤として利用される)。
カシア油(Cinnamomum cassia)(中国シナモン油ともいう)を、シナモン皮油と偽って売る業者も多い。シナモン葉油は、クローブ葉油、ベイリーフ油、合成オイゲノールを混合してつくったニセモノを販売する人間も少なからずいるので、くれぐれも要注意。ひどいのになると、燃料用油、ケロシン、石油などを増量剤としてたっぷり加えて「ホンモノでござい」といって売りつける悪人も少なくない。
 
・毒性
 LD50値
 シナモン葉油 ラットで2.7g/kg(経口)、ウサギで5g/kg(経皮)
 シナモン皮油 ラットで3.4g/kg(経口)、ウサギで0.7g/kg(経皮)
 
 刺激性は、ヒトで10%濃度で反応はゼロ。
 
 シナモン葉油をヒトで10%濃度で試験した際には、刺激性はみられなかった。しかし、皮油では被験者の80%に感作が見られた。
 光毒性は観察されていない。
 
・作用(もちろんホンモノでなければ、下記の効果は期待できない)
 シナモン葉油には、かるい痙攣惹起作用がある。
 抗菌作用は皮油・葉油とも強力。
 抗真菌作用も、皮油・葉油とも強力。
 葉油は酸化防止作用が著明。
 
 シナモン皮油および葉油は長らく歯科治療で使われてきた。また、練り歯磨きにこれを加えると殺菌作用を発揮する。また皮油・葉油とも内用して、その駆風作用と下痢治療作用とが活用されてきた(アルコール飲料に10%濃度で加えて内用したり、沸騰させた湯に同程度の濃度で入れて飲用する)。 
葉油は痛風・リウマチの痛みを緩和するのに外用して有効。

2014年4月10日木曜日

シトロネラ | 精油類を買うときには注意して!⑩

シトロネラ(Cymbopogon nardus 別の学名として Andropogon nardus)油
 
乾燥させたイネ科の植物、シトロネラの全草を水蒸気蒸留して抽出した精油。
このハーブは乾燥させないと、蒸留時にひどく燃料を要してしまうばかりでなく、抽出した精油の香りも悪い。そのため、干して余分な成分を蒸散させる。
産地はスリランカ、ジャワ、台湾、インドネシア、インド、中国
 
・主要成分(%で示す)
 ゲラニオール    11〜26
 シトロネロール   4〜24
 シトロネラール   5〜48
 リモネン      3〜9
 カンフェン     0〜8
 セスキテルペン類  産地により変動がある
 
・偽和の問題
 シトロネラ油は安価なので、これのニセモノを作ることは、まずないといってよい。ただ、シトロネラ油自体、ゼラニウム油とバラ油との増量剤として利用されることが往々ある。メリッサ油のニセモノを作る場合、その成分の一部として配合することが極めて多い。
 
・毒性
 LD50値は、
 ラットで>5g/kg(経口)、ウサギで3.4〜6.7g/kg(経皮)
 刺激性・感作性は、ヒトで8%濃度で、いずれも認められなかった。
 しかし、皮膚炎患者の一部には、この精油を未稀釈で皮膚につけた場合、感作反応を生じたケースもあった。
 光毒性はまだ試験例はない。
 シトロネラ油に接触したとき、過敏に反応して湿疹を生じた例もある。
 また、ニキビ様毛包炎が両手、各指、前腕部にこの未稀釈精油に触れて発生した例も報告されている。
 
・効果
 in vivoでモルモットの回腸において痙攣惹起効果を示すことが判明した。
 抗菌作用はかなり強力。
 抗真菌作用も、かなり強力。
 昆虫忌避作用があり、これを単独で使用したり、ゼラニウム油やパルマローザ油などと組み合わせて用いたりして虫を追い払うのに利用される。 

2014年4月3日木曜日

シダーウッド | 精油類を買うときには注意して!⑨

シダーウッド(Cedrus atlantica)油
 
これは、マツ科植物。ほかにテキサスシダーウッド(Juniperus mexicana、ヒノキ科)、ヴァージニアンシダーウッド(Juniperus virginiana、ヒノキ科)があり、これらからも精油を抽出する。
ふつうは、Cedurus atlantica(アトラスシダーウッド)の木部を細かく砕いたものを蒸留抽出した精油のことをさす(葉から抽出する場合もある)。
 
・主要成分(%で示す)
         アトラス    ヴァージニア    テキサス
 セドロール    16.5       24.0       26.8
 α-セドレン      6.5         3.1         4.5
 β-セドレン    24.6       21.3       31.5
 ツヨプセン    29.2       10.2       17.8
 
・偽和の問題
 各種のシダーウッド油は、まぜあわせて商品化されている。したがって、商品によって成分上、大きな差がある。
 純粋に1種類のシダーウッド油だけで売られることはまずない。
 そこで、シダーウッド油については、いわゆる偽和のことは、ふつう問題にされない。なお、ヴァージニアンシダーウッド油だけは、欧米で食品添加物にも用いる。
 
・毒性
 アトラス、ヴァージニア、テキサスの各種とも、LD50値は、
 ラットで>5g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
 刺激性・感作性は、ヒトで8%濃度で、いずれも認められなかった。
 光毒性は報告されていない。
 
・効果
 テキサス、アトラス、ヴァージニアの各種とも、モルモットの回腸で弱い鎮痙作用を示した。
 殺菌作用抗真菌作用とも、どの種のシダーウッドもほとんど認められない。
 抗酸化作用も、どの種のシダーウッドにもないといってよい。
 
 いろいろな本で、この精油は各種の疾患にきわめて有効なようにいわれているが、実際には上記のようにあまり役に立たない精油と心得られたい。