2014年9月16日火曜日

ベチバー | 精油類を買うときには注意して!(28)

ベチバー(Vetiveria zizanoides)油
 
 イネ科の単子葉植物。多年草。熱帯アフリカ、アジア、オーストラリア、アフリカ、南米などに、およそ10種が分布する。
 
学名:Vetiveria zizanoides Staph.
   V. odorata Virey
   Andropogon muricatus
 
 英名ベチバー(vetiver)で広く呼ばれる。ベチベル(ソウ)といったころもあった。
 
精油の抽出:この草(1年に2度収穫できるところもある)の根および根茎を採取して日光にあてて干したものを水蒸気蒸留して抽出する。
      生育地によって、その芳香と化学組成とに大きな差異がある。
 
 
主要成分(%で示す)
 ベチベロール     10
 ベチベロン      9
 ベチベロンエステル類 各種各様
 
 (注)ベチバー油は、米国のFDA(食品医薬品局)で食品添加物に認定されている。
 
・偽和の問題
 サイベラスのような他の草本の根とともに蒸留され、精油の量を増やす手が使われている。他の植物からとったベチベロールが加えられることもある。合成したカリオフィレン、シダーウッドの成分、アミリス油が添加されることも多い。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて8%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  なし。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、弱い鎮痙作用が生じた。
 
 抗菌効果 ベチバー油を蒸散させて、5種類の細菌のうち1種に有効であった。
 
 抗真菌効果 弱い。 
 
英国のアロマテラピー研究家、マギー・ティスランドは、毎日乳房を美しく保つためにツバキ油のキャリヤーにこのベチバー油あるいはゼラニウム油を混ぜてマッサージをしているそうである。

2014年9月11日木曜日

精油のシナジー効果を利用した精油の新しいレシピ(1)

①精油のシナジー効果について
 現在、フランスならびに、とくにスイス(そのフランス語圏)において、各種の精油のシナジー(英語:synergy、フランス語でsynergie〔シネルジー〕)効果を活用したブレンドを利用する、アロマテラピー実践家が増えてきている。
シナジー、あるいはシネルジーは「ある一つの目的を達成するために、複数のファクターを恊働させること」と定義できる。
したがって、精油のシナジー(シネルジー)という場合には、それぞれの精油成分の秩序のとれた、複合的な各種の働きが、極めて明確な一つまたはそれ以上の効果を的確に発現させることを含意する。
 
基本的なシナジー効果
 a) 鎮静:神経筋、自律神経系鎮静、蓄積され停滞したエネルギーの分散、筋肉拘縮弛緩
 b) 強壮:精油を適用した箇所のエネルギーの喚起、あるいはその部分へのエネルギーの供給。脊柱上部(頸部と肩甲骨上部)にブレンド精油を適用する。神経系ならびに心臓・呼吸器関連神経系へのエネルギーの充足を目的とする。
 c) 刺激:上述のb)とほぼ同じ目的であるが、c)ではとくに脊柱下部(その下部背面・仙腰椎)の強壮をめざす。腎臓の排泄・消化機能のエネルギー充填をめざす。
 
これのほか、個人個人の体質に応じたシナジー効果、体組織の刺激と強化とをめざすシナジー効果の発現を目的とする。
 
 
②現実にブレンド精油を適用する箇所は、そのほかさまざまある。
①でのべたのは、あくまでも現在行われているトリートメントの基本的な概略を示したもので、実際には、足裏の反射ゾーンや太陽神軽叢(みぞおち)の部分その他にも、ブレンド精油を適用して、めざす効果の発現を図る。
 
今回のレシピ
 ストレスは、さまざまな病気の原因となる。これはストレスが主として自己免疫力、自己治癒力の低下を招来するためである。
 今回は特に、ストレスに起因する心理的なわだかまりがいつも心を離れず、うつうつとしたり、夜もよく眠れぬような状態におちいったときに適用するとよいレシピである。
 
④注意事項
 ストレスに悩まされている場合、以下の精油を、それぞれホホバ油のキャリヤーに5〜6%の濃度に稀釈し、これらを合わせる。そして、この含剤を胸部全体に、また太陽神経叢(みぞおち)に、また両足の裏の「腎臓」の反射ゾーンにそれぞれ1日に3回ないし4回、1回に10〜20分かけてよくすりこむ。
使用する精油は以下のとおり。
 
 Chamaemelum nobile(ローマンカモミール)油
 Hyssopus officinalis(ヒソップ)油
 Ocimum basilicum(バジル)油
 Pelargonium graveolens(ローズゼラニウム、ゼラニウム、ニオイテンジクアオイ)油
 Thymus vulgaris linaloliferum(タイム・リナロールケモタイプ)油
 
これらの精油について若干の説明を加えたい。
 
 ローマンカモミール油
   ストレス関連活性成分として ー
    テルペンアルコール類 :トランスビノカルベオール、ファルネソール、脂肪族アルコール類(75〜80%)
    アセテート類     :イソアミルブチレート、イソブチルイソブチレート、その他
    モノテルペンケトン類 :ピノカルボン(13%)
    セスキテルペンケトン類:3−デヒドロノビリン
   などがあげられる。
   特性として ー
    鎮痙、中枢神経系鎮静(強力)
    抗炎症(かなり強力)
    抗神経性ショック(強力)
   禁忌はない。
 
 ヒソップ油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペン類(<20%):α,β-ピネン(それぞれ3.66%、2.78%)、カンフェン(2.46%)、ミルセン(2.07%)、リモネン(5%)
    セスキテルペン類(<8%):α-コパエン、γ-ブルボネン、他
    テルペンエステル類(<2%):リナリルアセテート(1.2%)、ラバンズリルアセテート、ゲラニルアセテート
    オキシド類(およそ60%):トランスリナロールオキシド(57%)、他
   特性として ー
    交感神経および太陽神経叢への作用
   指示 ー
    神経性抑うつ症(強力)、苦悶、心拍異常
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 バジル油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペン類(2%):α,β-ピネン
    セスキテルペン類:イソカリオフィレン、β-カリオフィレン、β-エレメン
    非テルペンおよびテルペンアルコール類(65%)
    フェノールメチルエーテル類(10〜15%)
    テルペンオキシド類(6%)
   特性として ー
    神経強壮(かなり強力)
   指示 ー
    神経性抑うつ症、無力症
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 ローズゼラニウム油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペノール類(55%):リナロール(3.8%)、シトロネロール(44.5%)、ゲラニオール(6.5%)
    テルペンエステル類(25%)
    モノテルペン類
    テルペンオキシド類
   特性として ー
    全身的強壮、鎮痛
   指示 ー
    神経疲労、無力症、他
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 タイム(リナロールケモタイプ)油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペノール類:リナロール(60〜80%)、テルピネン-1-オール-4
    テルペンエステル類:リナリルアセテート
   特性として ー
    強壮、神経強壮(中枢神経系、延髄、小脳)
   指示 ー
    神経疲労(強力)、ブドウ球菌性腸炎(強力)、他
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 
付記①
 私は、知り合いの心療内科の医師2名(いずれも大学病院の准教授)、メンタルクリニックの院長1名、ならびに有名製薬会社の研究開発部長1名に、これらの精油の外用によって、万が一、そのトリートメントを自分の体にたいしておこなう人間が、たとえばストレスに起因した疾病を患っていて、医師から処方された薬剤を摂取している場合、それと望ましくない相互作用を惹起しないかどうか尋ねてみた。
 この人々は、ストレス性の各種疾患を列挙して、消化器系、各種神経系、循環器系、呼吸器系、生殖器系、泌尿器系、内分泌系などにストレスが原因して発症し得るほとんどすべての疾患において、これらの精油のブレンドがまず危険ではない、少なくともその精油類が100%天然自然のもので、化学的増量剤など一切配合されていないかぎり、それらの精油が体内に浸透する量を考慮して、まず心配は不要であるとの見解を一致して示した。むろん、この医師たちはアロマテラピーについて、すべて一定の理解をしている人びとである。
 
付記②
 アロマテラピー用精油を販売しているショップは、全国に多数ある。そうした店の責任者には、責任感が強く、精油とその効果とについて不断に勉強を怠らない人もいるが、中には残念ながら、精油についての知識が乏しく、精油につけてある成分表、分析表すら理解できず、詳しく聞いても何一つ答えられず、回答を求める顧客に逆ギレして、ヤクザまがいの対応をする店長がたくさんいることも確かである。最近、マスメディアで話題になった認知症予防騒動をふまえて、このことをハッキリ申し上げておく。
人間には本来自己免疫力、自己治癒力がある。そうしたものを強化すること自体は現行の薬事法・医師法になんら抵触するものではない。そこで、これから紹介する各種のブレンド用精油は、かならず下記の注文先から購入して頂きたい。他店でお買いになった精油について生じた結果については、当方としても責任のとりようがないからだ。
ここで言っておくが、現在有名なブランドの精油は9割以上は、増量剤などが加えられたニセものである。そうしたことを十分にご考慮願いたい。
 
 問い合わせ先・注文先(ご注文の精油の在庫がない場合もあるかも知れない。その場合は、少々時間を頂きたい。何らかの原因で入手不能になるケースもあろう。ここでは一定のブランド品を売ることを目的とせず、世界で入手できるもっとも信頼できる精油をさがしてお取り次ぎすることをめざしているからである)
 
 
繰り返すが、アロマテラピー用の精油は100%天然のものでなくてはならない。
このブレンドを使用するにあたって、現在、何らかの疾患で医師の処方した薬剤を摂取している場合は、かならず医師の見解を問い、それに従うこと。
精油は購入後、出来るだけ早く使い切ること(冷暗所に保存して頂きたい)。
精油は各種の不自然な処理をうけたものであってはならない(脱テルペン、調合、過度の高圧高温下での抽出など)。

2014年9月2日火曜日

フランキンセンス(乳香) | 精油類を買うときには注意して!(27)

フランキンセンス(Boswellia carterii)油
 
 フランキンセンス(ニュウコウジュ)は、カンラン科ボスウェリア属の常緑の低木あるいは小高木。アフリカ・アラビア半島・インドなどに数種類が分布している。
 ジャン・バルネ博士は、アラビア半島のオマーン産のものを特に上質と考えていたそうだ。
 
学名 Boswellia carterii Birdw.(乳香樹〔ニュウコウジュ〕)
 
 英名はfrankincence(フランキンセンス)、 olibanum(オリバナム)。アラビア半島からトルコにかけて分布する。この樹(樹皮)からとれる芳香性のガム樹脂を乳香、フランキンセンス、オリバナムと称する。幹に切り傷をつけると汁液がミルクのような色を呈して滲み出すところからこの名がある。もっとも、「乳香」という語は中国語で、薫陸香(くんろくこう)の異名もある。古代から薫香として用いられた。
 
主産地はソマリア、アラビア南部ドラマウト地方など。没薬とともに古代オリエントの代表的薫香。
 
西暦前4〜3世紀の古代ギリシャの哲学者で「植物誌」「植物原因論」などを書いたテオプラストスもこれについて触れ、西暦1世紀の大プリニウス(プリニー大公ではない!)の「博物誌」にもこの植物についての記載が見られる。
新約聖書で、これが没薬・黄金とともに幼な子イエスに捧げられたエピソードはあまりにも有名(マタイによる福音書)。
 
精油の抽出 樹皮から滲出した涙滴状あるいはその他の形状をしたオレオ ガム レジン(含油樹脂)を水蒸気蒸留して得る。
 
主要成分(%で示す)
 α-ピネン       1.0(ないし43)アデン産
 α-ツエン       0〜2(インド産のものは、61にも及ぶ)
 p-シメン       0.1(アデン産のものは8に達する)
 リナロール      0.2(エリトレア産のものは3にもなる)
 n-オクチルアセテート 0〜5(エリトレア産は>5)
 n-オクタノール    0〜4(エリトレア産ではおよそ8)
 
 この成分は、産地によって大幅な変動がある。国際的なグレードの基準は、ピネン含量で決められる。最高級のものは、その含有量が37〜42%のフランキンセンスである。もっとも、インド産のものはピネン含量が極めて低いにもかかわらず非常によい香りを放つことで有名。α-ツエン分のためであろう。
フランキンセンスは食品添加物としても使われる。
 
 
・偽和の問題
 フランキンセンス油の成分の多くが、合成したもので代用される。とくに品質基準物質のα-ピネンを化学合成品でごまかした製品がでまわっている。こうしたニセモノには、くれぐれもご用心のほどを。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて8%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  まだ試験例は報告されていない。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、強烈な痙攣惹起作用を示した。
 
 抗菌効果 フランキンセンス油は、多種多様な細菌にたいして非常に強力な殺菌・抗菌作用を示す。
 
 抗真菌効果 弱い。
 
 抗酸化作用 認められない。
 
(注)ダニエル・ペノエル博士らによると、この精油は免疫機能不全に起因する各種症状に有効とのことである。 

2014年8月26日火曜日

プチグレン | 精油類を買うときには注意して!(26)

プチグレン(Citrus aurantium L. ssp. amara、別名 C. bigaradia)油
 
 プチグレンという植物は存在しない。俗にビターオレンジ、あるいはビガラディアレモン、ビガラディアオレンジと呼ばれるミカン科のカンキツ類果樹の葉・小枝を、ときにはそのほかのカンキツ類の同じ部位を水蒸気蒸留して抽出した精油を、一般にプチグレン油と称する。
 
 フランス、イタリア、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、スペイン、パラグアイなどで生産される。
 ミカン科の果樹は、東南アジアあるいはインドなどが原産地と考えられており、12世紀以降、ヨーロッパにポルトガル人・スペイン人らにより導入された。
 
 ミカン科の果実は、非常に多い。日本でもウンシュウミカン、イヨミカンを筆頭に、ネーブルオレンジ、スウィートオレンジ、ナツミカン、ポンカン、デコポン、キンカン、ブンタン、カボス、ユズ、スダチ、サンポウカン、シトロン(Citrus medica)、レモン(フランスではレモン〔C. limon〕のことをシトロンという)、ハッサク、ベルガモット、イヨカン、ライム、サワーオレンジ、タンカン、タンジェリン、マンダリン、沖縄のシークヮーサーなど、いくつもこの仲間があげられる。交配すると、すぐに雑種ができる(美味かどうかは別として)。
 最近では、ユズのエッセンスが高知県で生産されている。私はこれをイカのシオカラにちょっとたらして食べるのが大好きだ。一度ためしてごらんなさい。ヤミツキになるから。
 
主要成分(%で示す。これはC. aurantium L. ssp. amaraの成分だが、それも、産地により大幅な変動がある。一つの目安とされたい)
 リナロール     19〜20
 リナリルアセテート 46〜55
 ネリルアセテート  2〜3
 α-テルピネオール  4〜8
 ゲラニオール    2〜4
 ミルセン      1〜6
 
注) C. aurantium L. ssp. amara以外のミカン科果実を併用したり、あるいは代用としたりすることが多いため、その成分も、同じ「プチグレン」といいながら、大幅に製品によって異なり、当然その香りもちがってくる。いわんや偽和品においておやである。
 
・微小成分について
 プチグレン油には、400種以上の成分が含まれる。今後の研究で、この数はさらに増えるだろう。それがプチグレン油の特異な香りの源になっている。私は南仏グラースで、ビターオレンジの葉をとって、揉んで香りを嗅いだが、あの香りこそ、ほんもののプチグレン油の香りだったと、いまにしてつくづく思う。
 
これの微小成分としてβ-ダマスケノン、β-イオノン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、それにα-テルピニルアセテートなどがあげられる。これらは、薬効にはさして寄与するものではないが、これらもプチグレン油の香りを形成するのに大きく貢献する。
 
・偽和の問題
 プチグレン油の偽和には、レモングラス油がよく利用される。レモングラス油をプチグレン油と詐称して売るヤカラもいる。また、合成したシトラール、レモン油なども偽和・増量のためによく使われる。
また、プチグレン油自体も、もっとずっと高価なネロリ油の偽和に使われる。プチグレン油をネロリ油だといって販売するメーカーもたくさんある。
同じ果樹の花を使うか、葉・小枝を用いるかの差だけなので、こんなインチキはかんたんにできるわけだ。
 
petit grain(プチグレン)は、フランス語で「小さい粒」という意味。この精油を顕微鏡でのぞいて見ると、小さい粒々がたくさん浮いていることから、この名ができたとされる。また、その他の説もいろいろある。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ビターオレンジのプチグレン油では7%濃度で、またビガラディアレモンでは10%濃度でいずれも認められなかった。ただし、極めて稀な例として、200人の皮膚炎患者のうち1人が感作性を示したケースが報告されている。
 
 光毒性
  認められない。
 
注)プチグレン油は、ビガラディアレモンまたはビガラディアオレンジの葉・小枝を水蒸気蒸留して抽出する文字通りの精油である。だから、果皮を冷搾して得られるエッセンスではない。したがって、光毒性のあるフロクマリン類などは一切含まれない。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、最初痙攣惹起作用をおこし、ついで鎮痙効果を示した。
 
 抗菌効果 各種細菌にたいして強力な抗菌作用を示したとの報告があるが、そうした作用は認められなかったとする学者もおり、最終的な結論は、まだ出ていない。
 
 抗真菌効果 一般的に、真菌の種類により強弱の差はあるものの抗真菌力はかなりあるといってよい。
 
 抗酸化力 微弱ながら、あるとされる。 

2014年8月19日火曜日

〔コラム〕精油レシピ集を発表するにあたって

 私は、これまで、この「R林太郎語録」を通じて、日本に最初にアロマテラピーを紹介した者として、多くの「アロマテラピー」関係者が無視し、あるいは軽視してきた観点から、私がアロマテラピーをいかに日本人に伝えてきたかをできるだけ誠実に記述してきた。

 これを「暴露」だと騒ぎ立てる超低IQの、到底ホモ・サピエンスの要件を満足させているとは考えられぬ一見人間型の動物どもが存在する。イヌ・ネコは、どこまでいってもイヌ・ネコである。真実をきちんと述べることを「暴露」とほざくなら、私はこれからも真実を暴露し続けていくことを、明治のジャーナリスト黒岩涙香に倣って、おのれの使命としてみずからに課していくつもりである。
 いままで、自分がアロマテラピーを、法外な高い料金をとって生徒たちに教えてきたこの亜人間どもは、それがデタラメだったことが多くの生徒たちに知られ、自分の権威(笑わせてはいけない)が失墜してしまうので、この私を「筆者の人格を疑う」だの「いままでの筆者にたいする評価がぐんと下がってしまった」だのと、酔いどれのろれつのまわらぬタワゴトのような下らぬ感想を並べている。
 私に異論があるなら、堂々とシラフで言うがよい。冷静に常識と論理とをもって私を論破してみるがよい。幼稚園児にもあざけられるようなバカらしい愚劣なセリフをならべて恥ずかしいとも思わないのだから、この連中は「亜人間」ないし人間型の動物としか、私には彼らを形容するすべがない。
 人間が完璧な存在でないことは、私自身よく知っている。しかし、何かを記述し、とくにそれを人に教示する場合には、自分の力の及ぶ限りの努力をして、他人の説くところが真実であるか否かをを徹底的に吟味し、その真偽を能(あた)う限り調べあげなければならない。私だってまちがったことはいくどもある。
 しかし、そのつど、外国へ行ってその説を唱えた本人に直接会っておのれが十二分に納得するまでその当人に問いつめたし、さまざまな意味で信頼のおける専門家に面会して見解を求めたり、そうした人々の著書をつねに批判的に読んだりして、おのれの理解を深めてきた。自分が誤解していたことを人に伝えてしまったような場合には、土下座でもなんでもしてあやまったものだ。
 だから、私は「個人崇拝」など絶対にしない。ルネ=モーリス・ガットフォセであれ、マルグリット・モーリーであれ、ジャン・バルネ博士であれ、間違っていると思われる部分は容赦なく剔抉(てっけつ)し、批判をしていく。それが、アロマテラピーをさらに深く私自身が理解し、亜人間どもとちがって正常な知性をもってアロマテラピーを考える方がたを助けることになるのだから。
 
 ここまで20数種にわたる精油(アブソリュートも含めて)について、いま市販されている品の私なりの評価をしてきた。精油を扱う良心的な業者の方がたのご意見もじっくりうけたまわって、このままでは「アロマテラピー」がもはやテラピーたる資格を失ってしまう危機感をひしひしと覚えた。その気持ちが、どれほどの人びとに伝わっただろうか。だが、ものを考えることのできる人間ならば、断じて大勢に盲従してはならない、と私は強く強く訴えたい。
 ここで少し話を変える。私は、いま書店に並んでいるアロマテラピー関係書を手に取ってみて、それがことごとく、How to本だと思わずにはいられない。
 しかし、私は故・藤田忠男博士の表現を借りれば「焚書」にされた私の本でもこの「語録」でも、How to的態度をとらず、Why soという哲学的な観点からアロマテラピーを考えてきたつもりだ。そして、それはそれで正しいと私は思っている。
 しかし、多くの人びとから個人的に私に寄せられる意見として、世間にでまわっているコピペにコピペを重ねた無責任な精油のレシピではない、きちんと理論的に整合性のある、「人体のさまざまな反射作用を活発化させ」、「ホルモンの調整作用を強化し」、「体内の諸酵素の働きを活性化し」、「血液の状態を正常化し、調和させ」、「体液のバイオエレクトリカルな要素の均衡(これの詳細については〔アロマテラピー大全〕を参照されたい)の回復を図る」ことをめざした精油の新しいレシピを示してほしいというご意見に接して、その声にお応えするのも、アロマテラピーをご理解頂く一つの道だと考えるようになった。
 
 そこで、これから残るところあと10数種あまりの精油の解説と合わせて、随時そうしたレシピをいくつか提示させて頂くつもりでいる。
 ただし、その際に用いる精油は、以下の要件を満足するものでなければ、これらのレシピは無益なものとなってしまうと心得られたい。すなわち、
 ・その精油の原料植物が、100パーセントまちがいなく、その植物だと同定されているものであること。
 ・その原料植物が正しいやりかたで収穫されたものであること。
 ・ケモタイプを十分に考慮に入れていること。
 ・水蒸気蒸留抽出(エッセンスならば圧搾抽出)したものであること。
 ・100パーセント自然なピュアな精油であること(たとえ天然精油でも、いくつかの産地の精油を調合したものは、天然自然の精油とはいえない)。
 ・脱色処理、過酸化処理、特定の成分の人為的除去などをうけていない精油であること。
 ・搾油してからあまり時間が経過しておらず、かつ光と熱とから離れたところに保管されたものであること。
 ・およそ天然自然からかけ離れた、化学的な増量剤などを含んでいる香水用の精油は論外である。絶対に使用しないこと。
 
なお、このほか必要な事項は、その都度記述していくつもりである。
 
 レシピは、順不同に掲載させて頂く。
 はじめに、簡単な例をあげておこう。今回はここまでにしておく。
 
 ●不整脈(そのほか各種の心臓の律動異常)
  アンジェリカ(Angelica alchangelica)油
  スウィートオレンジ(Citrus aurantium var. dulce)油
  ヘリクリスム(Helichrysum italicum)油
  ラベンダー(Lavandula angustifolia var. angustifolia)油
  バジル(Ocimum basilicum)油
  ローズマリー・カンファーケモタイプ(Rosmarinus officinaris camphoriferum)油
 
 これらを両手首、両足の裏、とくに土踏まずの部分にすりこむ。
 これらの各種精油を、ホホバ油そのほかのキャリヤーオイルに5〜6%濃度に稀釈したものをそれぞれいっしょに(等量ずつ)合わせて、それを指定した箇所にすりこむ(1日に3〜4回)。この稀釈の度合い、ブレンドの仕方、トリートメントは、これに続く各レシピのすべてでおおむね同様にする。 

2014年8月12日火曜日

フェンネル(ウイキョウ) | 精油類を買うときには注意して!(25)

フェンネル油
 
 フェンネルは、セリ科ウイキョウ属の1年草あるいは多年草。私にはさして魅力的とは思えないその散形花には、開花期には昆虫がたくさん集まる。
 ヨーロッパからアジアにかけて数種が分布する。
 
学名① Foeniculum vulgare var. amara Miller
    英名はBitter fennel(ビターフェンネル)、日本ではフェンネル、茴香(ウイキョウ。これは、中国語の茴香〔フイシャン〕に由来し、鮮度の落ちた魚類を用いた料理で、この実を香味料にすると、その香りを回〔かえ〕す、すなわちフレッシュなよい香りに戻すとの意味をあらわす)と称される。
 草高1〜2メートルになる大型草本。中国には4〜5世紀に西城から伝来し、日本には9世紀前に中国から渡来した。フェンネルは古代ギリシャではマラトン(Marathon)と呼ばれた。これはマラソン競技が行われた土地が、これの群生地だったことによる。それはどうでもいいが。中世以来、ヨーロッパではフランス、イタリア、ロシアなどの料理にこの実が香味料としてひろく利用されるようになった。
 インドでも香味料として古来から使用された。
 中国では、腹部・胸部の鎮痛剤としても用いられている。
 日本では、長野・岩手・富山の各県で栽培される。
 
学名② Foeniculum vulgare var. dulce Miller
    英名はSweet fennel(スイートフェンネル)、Florence fennel(フローレンスフェンネル)、日本ではイタリアウイキョウ、アマウイキョウと称される。
 このウイキョウは、①のビターフェンネル同様に、その実が香味料としても使われるが、それよりもウドのように軟白栽培して、野菜としてその群生葉の基部(直径10cmくらいになる)を煮て食べる。これがうまいんだな。
 
 ビター、スウィートの両種とも、その実を採取して水蒸気蒸留して精油を抽出する。
 現在、スペイン・東欧諸国で多く栽培されている。
 
 
主要成分(%で示す。ビター・スウィート両種をひっくるめたおおよそのパーセンテージである)
 トランス-アネトール   30〜75
 シス-アネトール     0〜0.3
 フェンコン       10〜25
 メチルカビコール    1〜5
 リモネン        1〜55
 α-ピネン        1.5〜55
 
・偽和の問題
 アロマテラピーで、というよりも、香料工業において重要視されるのは、スウィートフェンネル油のほうである。そこで、ビターフェンネル油でこれが偽和されることは往々ある。そしてまた、いずれも安あがりに合成したトランス-アネトール、フェンコン、メチルカビコール、リモネンなども偽和のために大いに利用される。そのほか、フェンネルの近縁のセリ科植物の実を蒸留した各種留分も、増量のために使われる。
 
・毒性
 LD50値
  ビターフェンネル油:
   ラットで4.5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
  スウィートフェンネル油:
   ラットで3.8g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ビター・スウィートの両種で、ヒトにおいて4%濃度でこれらは一切認められなかった。しかし、スウィートフェンネルを未稀釈でマウスの皮膚に適用したところ、激烈な反応を呈し、ウサギの皮膚でテストしたところ、相当な反応が見られた。
 アネトールは一般にアレルギーを惹起する作用を示し、有毒成分の一つに数えられる。
 
 光毒性
  認められない。
 
・作用
 薬理作用 スウィートフェンネル油は、モルモットの回腸で、in vitroで強烈な鎮痙惹起作用をあらわし、ついで鎮痙作用を示した。
 フェンネル油は、エストロゲン様作用(女性の発情性ホルモン的な働き)を示すとされる。これが、女性のバストを大きくするか、また泌乳量を増加させるかは目下、研究中。
 ハーブとしてのフェンネルを摂取させた家畜にも、そうした作用のせいで繁殖上の問題を生じたというケースがいくつも報告されている。なお、妊娠中の女性のこの精油の摂取を禁忌とする学者もいる。
 抗菌効果 あまり強力とはいえない。あることはあるといった程度。
 
 抗真菌効果 かなり強力。
 
 駆風作用 とくに小児において顕著とされる。しかし、私はこれを摂取した子供がブウブウ放屁するのに接した記憶はいまのところない。 

2014年8月7日木曜日

パルマローザ | 精油類を買うときには注意して!(24)

パルマローザ(Cymbopogon martinii Stapf. var. motia、別名 Andropogon martinii Roxb. var. motia)油

 イネ科のオガルカヤ属の多年草。これに属するものは、アフリカ・アジアの熱帯と亜熱帯との各地方に生える。
 イーストインディアン油、ターキッシュゼラニウム油とも称される。バラを思わせるフローラルな甘い香りの精油。
 原産地 インド、マダガスカル、中央アメリカ、ブラジル。
     現在も、これらの地域で栽培されている。ほかにコモロ諸島およびセーシェル諸島でも、これが栽培され、精油が生産される。
 精油 花の咲く前に収穫した全草を、1週間ほど乾燥させてから水蒸気蒸留して搾油する。

主要成分(%で示す)
 ゲラニオール     76〜83
 ゲラニルアセテート  5〜11.8
 リナロール      2.3〜3.9
 ネラール       0.3〜0.6
 ファルネソール    0.3〜1.5
 β-カリオフィレン   1〜1.8

 以上はおおよその目安であり、産地その他の条件により、成分に相当な変動がある。
 パルマローザの近縁植物に、Cymbopogon martiinii Stapf. var. sofiaがある。これは「ジンジャーグラス」と呼ばれる。これからジンジャーグラス油を蒸留抽出する。
 C. martinii var. motiaとC. martinii var. sofiaとをまとめてパルマローザ油と称することもある。Var. motiaのほうが品質のよい洗練された香りの精油と考える人のほうが多い。

・偽和の問題
 ジンジャーグラス(Var. sofia)は、野生で収穫しやすいことから、これからとった精油を偽和剤とすることがひろく行われている。しかし、ジンジャーグラス油のゲラニオール含有量は、Var. motiaよりも少ない。偽和のために、さらにテレビン油、シトロネラ油、合成したゲラニオールが加えられることもよくある。
 また、このパルマローザ油自体も、ゼラニウム油、バラ油の増量のために利用されることが多い。

・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)

 刺激性・感作性
  ヒトにおいて8%濃度で認められなかった。

 光毒性
  報告例なし。

・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで鎮痙作用を示した。
 抗菌効果 各種の細菌にたいして、かなり強力な抗菌力を発揮する。

 抗真菌効果 中程度の抗真菌作用を示すことが報告されている。

 その他の作用 かなりの酸化防止力がある。また、CNVの波形を見ると、この精油の芳香にはリラックス作用があることがわかる。