2015年6月26日金曜日

ティートリー油についてもっと詳しく-1

ティートリーというオセアニア原産の木本植物から抽出された精油は、この高木自体がヨーロッパ人に知られてからの歴史も浅く、香料原料とされてこなかったこともあり、アロマテラピーでもまだまだ、それにふさわしい扱いをうけていないように思う。
そこで、このティートリー油について、いくつか思いつくままに、それの特色、注目すべき点、身近な利用法などについて、2回にわたって載せてみようと考えている。

フトモモ科(Myrtaceae)には、何千もの種・亜種が含まれる。この科の植物のほとんどが、エッセンスを収めたエッセンス嚢を有する芳香を放つ葉をもつ。
マートル(ギンバイカ)、ニアウリ、ベイラム(ピメンタ)、カユプテ、クローブ、そしてユーカリ、ティートリーなどがこの科に属する。

ティートリーは、フトモモ科に属するMelaleuca属(コバノブラッシノキ属)の樹木の一種で、コバノブラッシノキ属には、150種にもなるティートリーの各種がある。
この中でもっもと有名なのがMelaleuca cajuputi(カユプテ)とMelaleuca quinquenervia(ニアウリ)であり、いずれも殺菌作用で名高い。しかし、それに次いで有名なMelaleuca alternifolia(ティートリーのスタンダードになる種)の精油には、広いスペクトラムのひときわパワフルな殺菌力がある。

ティートリーは、オーストラリアのニューサウスウェールズの比較的狭小な地域に生育する。
このほかの地区でも、この植物は育たないわけではないが、それから抽出した精油が殺菌力においてはるかに弱いのは、なぜだろうか。

学名のMelaleuca alternifoliaについて考えてみよう。Melaは「黒い」、「ダーク」なという意味、leuca(文法上leuconが原形)は「白い」を意味する。この樹木の外観からきた名である。黒を思わせる濃緑の葉と白い幹との色の対比を思いうかべてほしい。種小名のalternifoliaは「葉が交互についている」ということである。

ティートリー油の成分は、1968年に12種が、1978年に48種がつきとめられた。現在はさらに多くの成分の存在が判明しつつある(100種をはるかに超している)。これらの成分はいずれも協働的・相乗的に作用して、ティートリー油の有効性を担保している。その有効性には、他の精油類にはみられぬユニークなものがある。

ティートリー油には、テルペン類、ピネン類、シメン類、テルペン系シネオール類、セスキテルペン類、セスキテルペンアルコール類が含まれ、さらに植物には通常含まれない少なくとも4種の特殊な組成成分が見出されている。それはビリジフロレン(0.95%)、β-テルピネオール(0.25%)、L-テルピネオール(痕跡量)、アリヘキサノエート(痕跡量)である。
原木をランダムに選んで、葉を採取して蒸留してみても、たとえばシネオール含量には2%から60%ないしそれ以上のひらきがある(植物学的にはすべて同一の原木なのにである)。

このティートリー油の主要成分の一つ、1.8-シネオールは、ご存じのとおりユーカリ油に多量に含まれている成分である。これがユーカリ油のカンファーに似た、いかにもユーカリらしい香りに貢献している。ティートリー油のシネオール分が異常に多いときには、そのティートリー油はユーカリ油で偽和されている可能性がある。シネオールは皮膚に浸透しやすい特性がある。これが腫れものなどに有効なのだが、15%を超す含有量だと、皮膚刺激作用を示し、アレルゲンとなる。

この成分に関することは、あとで改めて述べることとして、いまわかっているティートリー油の主要な成分をまずあげておきたい。もちろんこれは一つの目安である。

成分(%で示す)
α-ピネン 2.5      γ-ムウロレン 痕跡量
α-p-ジメチスチレン 痕跡量      グロブロール 0.2
レドール 痕跡量 ビリジフロール 0.1
ロシフォリオール 痕跡量 スパツレノール 痕跡量
cis-p-メント-2-エン-1-オール 0.1 テルピネン-4-オール 40
α-ブルネセン 痕跡量 カンフェン 痕跡量
α-ツエン 0.9 β-ピネン 0.3
α-アモルフェン 痕跡量 p-シメン-8-オール 痕跡量
リナロール 痕跡量 サビネン 0.2
α-クベベン 痕跡量 α-フェランドレン 0.3
α-イランゲン 痕跡量 1.9-シネオール 痕跡量
cis-サビネンハイドレート 痕跡量 リモネン 1.0
β-フェランドレン 0.9 1.8シネオール 0.1
α-グルユネン 0.2 トランス-ピペリトール 痕跡量
テルピノレン 3.2 クベノール 0.1
メンチュオイゲノール 痕跡量 β-カリオフィレン 0.1
アロマデンドレン 1.4 β-グルユネン 0.1
β-エレメン 0.1 δ-カジネン 1.2
アロ-アロマデンドレン 0.3 α-フムレン 痕跡量
ビリジフロレン 1.0 α-テルピネオール 2.3
α-ムウロレン 0.1 トランス-p-メント-2-エン-1-オール 0.2
パルストロール 痕跡量 ビシクロドルマクレン 0.1
γ-シメン 2.8 ミルセン 0.5
トランス-サビネンハイドレート 痕跡量 cis-ピペリトール 痕跡量
カジナ-1.4-ジエン 0.1 α-テルピネン 10.4
カラメネン 0.1 ネロール 痕跡量
α-コパエン 痕跡量 トランス-6-オシメン 痕跡量
1.2.4-トリヒドロオキシ-p-メンタン 痕跡量     

2015年5月23日土曜日

ジャン・バルネは、大戦中はもとより第1次インドシナ戦争中にもアロマテラピーを実践していなかった!

ポーランドの作家、シェンキエヴィチの小説”QUO VADIS”に登場する人物に、キロ・キロニデスなる毒舌家がいる。

キロニデスに言わせると、この世には、頭蓋骨の中に脳味噌を入れていて、物事をヒトとしてマトモに考察できる人間と、頭蓋骨に膀胱を鎮座させていて、外見こそ人間だが、ものごとをロクに考えることもできない「エセ人間」がいるらしい。

 この「膀胱人間」を、化学用語の芳香族をモジって「膀胱族」と、かりに呼ばせてもらおう。

アロマテラピーの中興の祖、ジャン・バルネは、1920年にフランスのフランシュ:コンテ地方(フランス東部に位置する、昔の州名)に生まれた。ラ・フレーシュ陸軍幼年学校を卒業したのち、陸軍衛生学校で医学の基礎を学んでいた。

 ジャン・バルネが20歳の時の1940年5月10日、ナチスドイツ軍はフランスの誇るマジノ線という現代版万里の長城みたいなチャナなしろものをアッという間もなく突破し、開戦からたったの1カ月すこしでフランスを手もなくねじ伏せ、フランスはあっけなく(だらしなく)、ナチスドイツに降伏した。その原因は多々あげられるが、時のフランス陸軍総司令官モーリス・ギュスターブ・ガムランが脳梅毒で思考力がゼロになっていたことが何よりも大きい(こんな男は「膀胱族」の最たるものだろう)。
 そしてまた、軍の先頭で将兵を指揮すべき立場にあったシャルル・ドゴールが戦場を放棄してはやばやと英国に逃亡してしまって、フランス軍をしっかり統率しうる人物が皆無だったことも、フランスの敗因だった。

 こうした状況下で、ナチスドイツ軍がかなり手を焼いたのが、フランス国内で、占領軍と、ナチスドイツの傀儡(かいらい)政権との威嚇に屈しないで対独闘争を展開していた対独抵抗勢力(レジスタンス派)であった。

学業半ばの21~22歳の学徒だったジャン・バルネ青年も、このレジスタンスに身を投じた。とはいっても、彼の年齢を考えてほしい。こんな若僧がメスを振るって負傷兵の本格的な手当てにあたることなどムリだ(注射はできたが)。ジャン・バルネ青年の任務は、もっぱらペニシリンなど最新の医薬品や消毒剤、包帯用品、注射器、メスなどを実際の負傷兵の応急装置を講じる先輩医師たちに、夜の闇にまぎれて届けることだった。
彼は書いている。

 「1945年2月、ブザンソンにおかれた412後送病院で外科業務に配属されていた私は、最も危険な場合を含めて、戦傷の治療にペニシリンが果たすめざましい効果のかずかずを学ぶことができた。

 ある晩のこと、コルマールでの戦闘のあと、数時間のうちに400名以上の負傷者を受け入れることになり、私はストランスブールに行って、私たちに必要なペニシリンの補充分をとってこなければならなくなった。1945年2月のブザンソン=ストランスブール間の往復の行程は、まさに大変な旅であった。雨氷、砲弾の跡、ふつうならとっくに引退しているようなジープのすり減ったショックアブソーバー、こういったもののすべてのせいで、しっかりした注意力が失われ、脊柱の頼りないバランスが手ひどく痛めつけられた。私は一晩中旅行をして、朝の5時ごろストラスブールのペニシリン保管所についた。

 日がのぼったとき、私はそれぞれ10万単位のペニシリンを50ボトル入れた箱を2箱、車に積みこむことができ、そのまま412病院にもどった。

 10万単位のペニシリン計100ボトル、すなわち1,000万単位のこの抗生物質ペニシリンで、当時は60本ほどの『脚』を助けることができ、(この頃は10万単位から20万単位で十分だった)、20体の『腹部』、あるいは同数の『胸部』を救うのに十分だったのである。」

 当時のジャン・バルネは正式な軍医ではなかった。軍医の助手であり、見習いであった。だから、彼が傷病兵に行っていたのは、あくまで、本物の軍医が執刀し、施術する前の予備的治療であった。つまり、負傷兵に術前措置としてペニシリンを3時間おきに25,000単位ずつ注射していた。これは、もとより先輩上司の軍医の指示に従ってのことだった。

こんな戦場において、どうしてジャン・バルネがアロマテラピーなどというものが行えるだろう。第2次大戦中からジャン・バルネ「博士」は、アロマテラピーを実践していた、などという膀胱族どもの記述を見ると、『ジャン・バルネ博士の植物:芳香療法』の復刊をぜひ実現させたいと思わずにはいられない。

 戦後、リヨン大学の医学部に入ったジャン・バルネは、ここでドクトラ(医学博士号)を取得し、正規の軍医となった。

 対独レジスタンス時代のジャン・バルネには、ペニシリンの副作用などに思いを致した形跡は、まったくと言ってよいほどない。考えてみれば当然である。致死的な細菌だらけの戦場、すさまじい速度でふりそそぐ銃弾、砲弾、それが爆発したあと、あたりの風景が一変する戦場、前を行く戦友の頭部が機関砲の一発で吹き飛び、頭を失った体が頸部から血を吹き上げながら5~6歩進んで、つまずいて倒れてそのままボロキレのように動かなくなる戦場。そんなところでの唯一の頼みの綱が抗生物質だったからだ。副作用?そんなのはぜいたく人間のタワゴトだと、戦場臨床医の誰もが思ったろう。

 1950年から52年にかけてジャン・バルネ軍医大尉がトンキン(現ハノイ)の第1前線外科医療班の外科医だったときと、そのあとサイゴン(現ホーチミン)の415後送病院に勤務していた時に、彼は時間をかけて、負傷兵の国籍別に、当時の主要な治療薬だったサルファ剤と抗生物質剤との(この時点ではペニシリン以外にも多くの抗生物質剤が開発され、米国からフランス側にどんどん提供されていた)有効性の度合いを比較する様々な研究を行った。そして、博士は「これらのサルファ剤や抗生物質剤などがヨーロッパ人よりもベトナム人、アフリカ人負傷者の方にはるかに著しい効果を上げるのを確かめることができた。これは、これらの国民の大部分がこうした薬剤で治療を受けた経験が全くないからである」と結論している。

 この第1次インドシナ戦争のフランス軍は、いわゆる外人部隊であり、旧ナチスドイツ兵、徴兵されたアルジェリア人、南ベトナム人などで構成されていたことは前述した。そのことを想起してほしい。

 ジャン・バルネ博士がこの第1次インドシナ戦争時に少しばかりアロマテラピーを実践したという(神話)があるが、博士自身は一度もそれについて具体的に触れた記述をしていない。だから博士がこの時期にアロマテラピーを実践したという実証はなにもないのだ。そして、このような伝説が生まれた背景には、ジャン・バルネ軍医はアロマテラピーを戦火の中で縦横に施術してほしいという一般のファンの願いのようなものがこうした形で結晶したのではないだろうか。

 抗生物質剤(ペニシリン・ストレプトマイシン・テラマイシン・オーレオマイシン・クロラムフェニコール・テトラサイクリンなど)にたいして、その安易な使用に警鐘を鳴らしはじめたのも、彼の軍籍離脱後であり、アロマテラピー(といっても、博士の説くアロマテラピーなるものとは、現代のアロマテラピーとは厳密に言って別物である。これについては、いずれはっきり述べるつもりだ)を研究し、抗生物質剤使用への一つの代案としてこれを世に問うたのも、すべて市井の一医師となってからである。

 それから、「膀胱族」のあいだで喧伝される「マルグリット・モーリーは、ルネ=モーリス・ガットフォセの弟子だった、マルグリット・モーリーはジャン・バルネ博士の弟子だった」というたぐいのホラ話は、もういいかげんにやめてもらいたい。そうしたヨタ話をあえてするなら、ハッキリした根拠を示して言うが良い。
でないと、日本の民度の低さを示すばかりだ。

2015年5月4日月曜日

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2015年4月22日水曜日

2015年4月5日日曜日

精油の原料植物のフランス語名‐その2

前回にひきつづいて、アロマテラピーで使用される精油の原料植物の主要なものをピックアップして、そのフランス語名と学名とを順不同に挙げる。

レモングラス(イーストインディアン)(仏名)lemongrass 〔レモングラス〕/(学名)Cymbopogon flexuosus

マンダリン(仏名)mandarine 〔マンダリーヌ〕/(学名)Citrus reticulata

マージョラム(仏名)marjolaine 〔マルジョレーヌ〕marjolaine à coquilles 〔マルジョレーヌ・ア・コキーユ]とも称する。/(学名)Origanum majorana

カモミール(ジャーマン)(仏名)camomille allemande 〔カモミーユ・アルマンド〕、matricaire 〔マトリケール〕とも呼ぶ/(学名)Matricaria recutita

ティートリー(仏名)melaleuque à feuilles alternes  〔ムラルーク・ア・フィユ・アルテルヌ〕/(学名)Melaleuca alternifolia

ニアウリ(仏名)melaleuque pentanerve 〔ムラルーク・パンタネルヴ〕/(学名) Melaleuca quinquenervia

メリッサ(仏名)mélisse officinale 〔メリス・オフィシナル〕citronnelle 〔シトロネル〕とも俗称。/(学名) Melissa officinalis

ペパーミント(仏名)menthe poivrée 〔マント・ポワブレ〕/(学名)Mentha piperita

スペアミント(仏名)menthe verte 〔マント・ヴェルト〕/(学名)Mentha viridis, M. spicata

ナツメグ(仏名)muscade 〔ミュスカード〕、正確にはnoix de muscade 〔ノア・ド・ミュスカード〕/(学名)Myristica fragrans

没薬(ミルラ)(仏名)myrrhe 〔ミール〕、正確にはmyrrhe amère 〔ミール・アメール〕 /(学名)Commiphora molmol

マートル(仏名)myrte commun 〔ミルト・コマン〕/(学名)Myrtus communis

ネロリ(ビガラディアオレンジ基原)(仏名)néroli bigarade 〔ネロリ・ビガラード〕/(学名)Citrus aurantium ssp. aurantium

乳香(オリバナム、フランキンセンス)(仏名)encens 〔アンサン〕またはoliban 〔オリバン〕、あるいはencens indien [アンサン・アンディアン〕/(学名)Boswellia carterii

オレンジ(ビガラディアオレンジ)エッセンス(仏名)oranger bigaradier 〔オランジェ・ビガラディエ〕/(学名)Citrus aurantium ssp. aurantium

オレンジ(スウィート)エッセンス(仏名)oranger doux 〔オランジェ・ドゥー〕/(学名)Citrus sinensis

グレープフルーツエッセンス(仏名)pamplemousse 〔パンプルムース〕/(学名)Citrus
paradisi

パチュリ(仏名)patchouli 〔パチュリ〕/(学名)Pogostemon cablin

パセリ(仏名)persil 〔ペルシ〕/(学名)Petroselinum sativum

パイン(スコッチ)(仏名)pin sylvestre 〔パン・シルヴェストル〕/(学名)pinus sylvestris

ラべンサラ(仏名)ravensare aromatique 〔ラヴァンサル・アロマティク〕/(学名)Ravensara aromatica

ローズマリー(仏名)romarin 〔ロマラン〕、正確にはromarin offinale 〔ロマラン・オフィシナル〕/(学名)Rosmarinus officinalis

バラ(ダマスク)(仏名)rose de damas 〔ローズ・ド・ダマ〕/(学名)Rosa damascene

サンダルウッド(仏名)bois de santal 〔ボア・ド・サンタル〕あるいは、santal blanc 〔サンタル・ブラン〕/(学名)Santalum album

ファー(モミ)(仏名)sapin blanc 〔サパン・ブラン〕またはsapin argenté 〔サパン・アルジャンテ〕/(学名)Abies alba

ウィンターセーボリー(仏名)sarriette des montagnes 〔サリエット・デ・モンターニュ〕/(学名)Satureja montana

サマーセーボリー(仏名)sarriette des jardins 〔サリエット・デ・ジャルダン〕/(学名)Satureja hortensis

セージ(仏名)sauge 〔ソージュ〕、正確にはsauge offinale 〔ソージュ・オフィシナル〕/(学名)Salvia officinalis

クラリセージ(仏名)sauge sclarée 〔ソージュ・スクラレ〕/(学名)Salvia slarea

ブラックペパー(仏名)poivre noir 〔ポアヴル・ノワール〕/(学名)Piper nigrum

テレビン(仏名)térébenthine 〔テレバンティーヌ〕/(学名)Pinus pinaster

ツーヤ(仏名)thuya occidental 〔テュヤ・オクシダンタル〕/(学名)Thuya occidentalis

タイム(仏名)thym 〔タン〕、正確にはthym vulgaire 〔タン・ヴュルゲール〕/(学名)Thymus vulgaris

レモンバーベナ(仏名)verveine citronnée 〔ヴェルヴェーヌ・シトロネ〕/(学名)Lippia citridora

ベチバー(仏名)vétiver 〔ヴェティヴェール〕/(学名)Vetiveria zizanoides

イランイラン(仏名)ylang-ylang 〔イランイラン〕、ilang-ilangとも表記/(学名)Cananga odorata

以上です。お疲れさまでした。正しい発音は、前にも申したようにカタカナで示すことはムリなので、私に電話くだされば、それを正しくお伝えしますよ。でも早朝・深夜は、ごかんべんください。また移動中は出られません。

高山林太郎 直通電話番号:080-5424‐2837

2015年3月28日土曜日

精油の原料植物のフランス語名‐その1

精油・エッセンス、あるいはアブソリュートの原料となる植物名は、日本ではおおむね英語名で呼ばれる。でも、これらをフランス語では何というかと尋ねられることが往々ある。アロマセラピストとしてアロマサロンを開設しようとする人が、店名にしようとしてか、そんなことを私に聞いてきたときもあった。 

そこで、主要な芳香植物のフランス語名と学名とを合わせてご紹介してみようと思う。しかし、カナで原語の発音を正確に表現するのは所詮、不可能である。あくまでも「近似的」なものと考えて頂きたい。順不同に記すことにする。

アンジェリカ (仏名)angélique alchangélique 〔アンジェリク・アルカンジェリク〕 /(学名)Angelica archangelica (天使ange 〔アンジュ〕の中でも上位のクラスである、上から2番目の天使をarchange 〔アルカンジュ〕という。ミカエル、ガブリエル、ラファエルなど。その形容詞がarchangéliqueである。)

バジル (仏名)basilic 〔バジリク〕 /(学名)Ocimum basilicum

ベルガモット (仏名)bergamote 〔ベルガモット〕 /(学名)Citrus aurantium ssp.bergamia

カモミール(ローマン) (仏名)camomille romaine 〔カモミーユ・ロメーヌ〕 /(学名)Chamaemelum nobile (camomille noble 〔カモミーユ・ノブル〕という仏名もある。)

カルダモン (仏名)cardamome 〔カルダモム〕 /(学名)Elettaria cardamomum

キャロット (仏名)carotte 〔カロット〕 /(学名)Daucus carota

シナモン(セイロン) (仏名)cannelle de Ceylan 〔カネル・ド・セラン〕 /(学名)Cinnamomum zeylanicum

キャラウェイ (仏名)carvi 〔カルヴィ〕 /(学名)Carum carvi

シダーウッド(アトランティック) (仏名)cèdre de l'Atlantique 〔セドル・ド・ラトランティク〕 /(学名)Cedrus atlantica

セロリ (仏名)céleri 〔セルリ〕 /(学名)Apium graveolens

レモン (仏名)citron 〔シトロン〕 /(学名)Citrus limon

レモングラス(ウェスト) (仏名)citronnelle 〔シトロネル〕、verveine des Indes 〔ヴェルヴェーヌ・デ・ザンド〕 /(学名)Cymbopogon citratus

コリアンダー (仏名)coriandre 〔コリアンドル〕 /(学名)Coriandrum sativum

クミン(仏名)cumin 〔キュマン〕 /(学名)Cuminum cyminum

サイプレス (仏名)cyprès toujours vert 〔シプレ・トゥージュール・ヴェール〕 /(学名)Cupressus sempervirens

エストラゴン(タラゴン) (仏名)estragon 〔エストラゴン〕 /(学名)Artemisia dracunculus

ユーカリ(レモン) (仏名)eucalyptus citronné 〔ユーカリプチュス・シトロネ〕 /(学名)Eucalyptus citriodora

ユーカリ (仏名)eucalyptus officinale 〔ユーカリプチュス・オフィシナル〕 /(学名)Eucalyptus globulus

ウィンターグリーン (仏名)gaulthérie 〔ゴルテリー〕 /(学名)Gautheria procumbens

ジュニパー (仏名)genévrier commum 〔ジュネヴリエ・コマン〕 /(学名)Juniperus communis

ゼラニウム(ローズ)(仏名)géranium rosat 〔ジェラニヨム・ロザ〕 /(学名)Pelargonium x asperum

ジンジャー (仏名)gingembre 〔ジャンジャンブル〕 /(学名)Zingiber officinale

クローブ (仏名)girofle 〔ジロフル〕 /(学名)Eugenia caryophyllata

ヘリクリサム (仏名)Hélichryse italienne 〔エリクリズ・イタリエヌ〕 /(学名)Helichrysum italicum

ヒソップ (仏名)hysope officinale 〔イゾプ・オフィシナル〕 /(学名)Hyssopus officinalis

ローレル (仏名)laurier noble 〔ロリエ・ノブル〕 /(学名)Laurus nobilis

スパイクラベンダー (仏名)lavande aspic 〔ラヴァンド・アスピック〕 /(学名)Lavandula latifolia, L.spica(フランスではかんたんに、aspic 〔アスピック〕とも称する)。

真正ラベンダー (仏名)lavande vraie 〔ラヴァンド・ヴレ〕 /(学名)Lavandula angustifolia(以前には、L.veraともいった)

ラバンジン (仏名)lavandin 〔ラヴァンダン〕 /(学名)Lavandula hybrida, L. intermedia

今回は、このくらいにしておきましょう。

2015年3月14日土曜日

ローズマリー|精油類を買うときには注意して!(42)

ローズマリー油

学名:Rosmarinus officinalis L.

 学名は上記のとおりだが、P.フランコム氏は、これの「ケモタイプ」を3種あげ、それぞれに下記のような学名をあてている。すなわち、
  1. Rosmarinus officinalis L. camphoriferum(カンファーケモタイプ)
  2. R. officinalis L. cineoliferum(シネオールケモタイプ)
  3. R. officinalis L. verbenoniferum(ベルベノンケモタイプ)
さらに、また同氏はR. officinalisの近縁種として、R. pyramidalisを紹介している(“Aromatherapie exactement”邦訳題名『フランス・アロマテラピー大全』高山林太郎訳)。

 ローズマリーは、シソ科マンネンロウ属の常緑小低木で、南欧地中海周辺に上掲の4種が生育している。和名はマンネンロウ、英語でrosemary、フランス語でromarin(ロマラン)、中国名は迷迭香(ミディエシャン)、ドイツ語でRosmarin(ロスマリン)、イタリア語でrosmarino(ロスマリーノ)、スペイン語でromero(ロメロ)という。

 学名は、ラテン語のros marinus(海の露、海のしずく)、すなわち波がうちよせる岩場の近くにこの植物がむらがって生え、4~5月ごろに咲く薄紫の小さな無数の花々が、あたかも砕ける波のしぶきを連想させることからRosmarinusと命名されたらしい。ローズマリーとか、ロスマリンとかという名は、女性の名としてよく使われる。

 この小低木は、高さ60~130㎝、葉は細長く、長さは3㎝ほど。葉の裏側には、びっしりとワタ毛が生えていて、葉がたくさんついた茎をかるく握ってスーッと滑らせると、てのひらに独特の爽やかな芳香が移る。これがローズマリーのエッセンスの香りである。この精油は、香料として広く利用される。また、ローズマリーはハーブの1種として、野菜料理、肉料理によい風味を添え、シチューやスープなどにも加えられる。
 
 ローズマリーの花の蜂蜜は私の好物で、フランスに行ったときには、ラベンダーの蜂蜜とともに、よく味わっている。日本でも、モーリス・メッセゲのハーブティーを扱っているショップなどで、この手の蜂蜜が購入できるだろう(ユーカリの蜂蜜、ヒマワリの鮮黄色の蜂蜜、タイムの蜂蜜なんていうのもオツなものですよ、それぞれの植物の風味がちゃんと残っている)。

 ヨーロッパでは、このローズマリーはハーブ薬として黄疸(おうだん)の治療に、また堕胎の目的などに使われ、さらに病気をもたらす瘴気(しょうき)を消し、悪魔を払うのに燻蒸剤として使用された。今日のチューインガムのように、この葉を噛んで口臭を消すのにも用いられた。

 中国では迷迭香として、胃を健やかにし、各種の痛みを鎮めるなどの目的で薬用される。
 日本には、文政年間(1818~1830)に入ってきた植物である。

原産地
フランス、イタリア、スペインなど地中海沿岸。今日ではロシア、中東などでも生育している。

精油の抽出
葉、あるいは木質化した部分をとり除いた花の咲いた先端・葉・茎の全体を水蒸気蒸留して精油を得る。

精油の化学成分(%で示す。各種のケモタイプにより大幅な差がある)
1,8-シネオール 7-60
ミルセン 0-10
α‐ピネン 3-34
β‐ピネン 1-8
p‐シメン 0-3
カンファー 3-30
ベルベノン 15-37
ボルネオール 1-12
ボルニルアセテート 2-3

(注)
R. officinalis camphoriferumは、カンファーを30%も含み、カンフェンは22%、1,8‐シネオールは30%それぞれ含有する。
R. officinalis cineoliferumには、1,8‐シネオールが60%も含まれる。
R. officinalis verbenoniferumは、ベルベノンを37%、α‐ピネンを最高34%おのおの含有する。
R. pyramidalisについては、含まれる成分の正確な数値はまだ十分に把握されていない。ただ、1,8‐シネオール分、αおよびβ‐ピネン分の含量はかなり高いとみられる。

偽和の問題
少量のローズマリー油に合成したシネオール、各種のテルペン類(αおよびβ‐ピネン、カンフェンその他)、サイプレス油、カンファー油、ユーカリ油(Eucalyptus globulusおよびE. radiate)、ターペンタインの留分、合成テルピネオール、シダーウッドの留分などでうんと増量したものが市場に出回っている。低価格で入手できるスペインのローズマリー花の脱テルペン精油を添加して、高級感をかもしだすという手のこんだ詐欺行為をする業者もいる。いわゆるブランド品の精油など、もっともタチが悪いと心得られよ。喝!

毒性の問題
・LD50値
 >5g/kg(経口)ラットにおいて
 >5g/kg(経皮)ウサギにおいて

・刺激性・感作性
 ヒトにおいて、10%濃度で皮膚に適用したが、これらはいずれも認められなかった。

・光毒性
 まだ、この試験報告はない、しかし、真正ローズマリー油の成分からみて、この作用はあまり考えられない。


作用
・薬理学的作用
ローズマリー油は、モルモットの回腸で(in vitroで)著明な痙攣惹起作用を示した。しかし、逆説的に一定の平滑筋弛緩作用、鎮痙作用も看取された。ウサギを用いての試験で、その気管の平滑筋を弛緩させる効果が認められた。

・抗菌作用
ほとんどの細菌にたいして、きわめて強力。ただ、この精油を蒸散させた場合は、その効果はかなり落ちる。

・抗真菌作用
真菌の種類によって、弱から中程度の効果を示した。

・その他の作用
抗酸化作用は、さまざまなテストの結果、この精油には期待できないことが判明している。ローズマリー油は、マウスを刺激し、興奮させる作用を示した。CNVの波形の観察によって、この精油がヒトの脳にもマウスと同様の効果があることがわかった。でも、だからといって、ローズマリー油に記銘能力を向上させるとか、果ては認知症を予防したり治療したりする力があるなどと性急な結論を出すのは、つつしみましょう、どこかの大学の先生がた。…

また、癲癇患者はもとより、遺伝的にその素質のある人間にローズマリー油のオイルマッサージを施すと、その発作を惹起するとされている。なにせカンファー分が多いからね。

付記1
 ヨーロッパでは、古代ギリシャの昔から、バラを花の女王と考える人びとが多い。古代ギリシャの美の女神アプロディーテー、古代ローマの美の女神ウェヌスを象徴する花として香り高く、色も美しいバラが選ばれたのも当然であった。こうしたヘレニズム文化と、そこに突如わりこんできたヘブライズム文化(ユダヤ教も母胎としたキリスト教的世界観を核とする文化)とのせめぎ合いが、のちのヨーロッパ文化を形成した。古代ギリシャ文化が後世のヨーロッパ文化に直結したものだなんていう奴には、ウソもいいかげんにしやがれ、とドヤしつけてやりたい。

 ところで、カトリック教会は宣教の方便として聖書にもろくな記述がない「聖母マリア」なる1種の女神を発明した。けだし母親への慕情はsomething internationalだからだ。で、この女神を崇敬するためにささげるものとして、ユリの花が選ばれた。汚らわしい、淫乱な多神教の女神を賛えるバラなど、もってのほかだというわけである。しかし、rosemaryというコトバの誕生後、その語源とは関係なくrose + mary、すなわち聖母マリアとバラが結びつけられて考えられるようになり、バラがこの一神教では本来、存在してはならぬ「女神」の像や絵画などに添えられるようになった。これも一種の「ルネサンス」だろう。このことはハーブとしてそのローズマリー、アロマテラピー用精油としてのローズマリー油とは、直接結びつくものではないが、ちょっと私がつれづれなるままに連想した一席である。

付記2
 シェークスピアの四大悲劇の1つ『ハムレット』で、忘れがたいセリフの一つに,復仇のために狂人を装ったハムレットにじゃけんに扱われ、なかば気がふれた哀れなオフィーリアのこういうことばがある。
“There’s rosemary, that’s for rememberance.”
(ローズマリーをどうぞ、忘れないで、というしるしよ)

 中近世のヨーロッパのハーバリズム(植物療法)でも、これの香り、あるいは香りのもとのローズマリーが、記憶を留める効果があるとされていたようである。また疫病の蔓延防止(これは理解できる)、不老、魂の不滅化(これはあまりアテにはならない)の目的でローズマリーが使用された。

 ローズマリーの花言葉は「変わらない愛と記憶」、「貞節・誠実」などである。どれもアテにならぬものばかりです。

付記3
 なんでもそうだが、CO2抽出法にもポジティブな面とネガティブな面とがある。たとえばラベンダー油に含まれるリナリルアセテート、ジャーマンカモミール油に含有されるカマズレンはいずれも水蒸気蒸留中に一定の圧力と熱とのもとで、化学的に自然に生成する成分なので、CO2抽出法でとったこれらのアブソリュートには、リナリルアセテートもカマズレンも入っていない。だから、それらの成分のもたらす諸効果も全く期待できない。

 しかし、ローズマリーのエッセンスは、CO2抽出法でとった場合、成分が変化しないので、なまのハーブそのままの成分が保持され、香りもローズマリー精油より格段によい。一度嗅ぐと、あっと驚くことうけあいである。ぜひ専門家にこの「効果」を臨床的に研究してほしいと願うこと切なり、だ。
ただし、原料植物が有機栽培・無農薬品でなければダメだが。


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